考えた結果、保護を願い出た。

 荒事あらごとになるのは目に見えているし、何より拝島伯父はいじまおじの目的はわたしだという話だ。自分からのこのこ出歩いていたら、かえって足手まといになりかねない。


 ユリカは薬で眠っている。かなり深い傷に見えたが、宗也そうやさんは「あとも残らないように治してくれるよ」と請合うけあってくれた。信じて良いんだろうか。


「終わったら話を聞かせて下さい。気を付けて」


 宗也さん達を見送ったわたしは車に戻った。

 巫女姿の女性、たまきさんがユリカと共に病院まで送ってくれるという。


「送り届けたあとまた合流しなきゃだから、急がないと」


 わたしのお尻を押すように車内に押し込める。

 ちくりと。首筋に小さな痛みを感じた。


「え?」


 振り向くと、環さんは小さな注射器を手に、妖艶ようえんな笑みを浮かべている。


「手早く済ませないと、怪しまれるものねえ」


 目が霞む。身体に力が入らない。


「これくらいの役得やくとくが無いと、こんな茶番に付き合ってられないわよ」


 見えない何かが車の周りをい回る気配がする。邪魔が入らないようにするためか。あれが何なのかは分からないが、助けは望めそうにない。


 環さんは帯をきながら車内に乗り込んでくる。彼女を押しのける力は、わたしには残されていなかった。


END.9



https://kakuyomu.jp/works/1177354054884676877/episodes/1177354054884676949

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