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脳裏に浮かんだのは、何故かキィの顔だった。
あの子はちゃんと宗也さんのところへ帰れただろうか。
海斗が一緒ならきっと無事だろう。昔から約束だけは守る方だったから。
もう良いよね。流されちゃっても。
目の前に、虹色の光が
こんなにすごいことになっちゃうんだ。自分でするのとぜんぜん違う。
あれ……違うのかな?
いぶかしむ私の眼前に、いつかどこかで出会った真っ白な少女の顔が浮かぶ。
『迎えに来たよ。わたしを助けようとしてくれたね』
そんなの良いよ。それより、遊ぶ約束を――
§
懐かしい匂いに包まれて目が覚めた。おばあちゃんの家の匂いだ。
もうそろそろ起きないと遅刻すると、しぶしぶ目を開けると、わたしの顔をキィがのぞき込んでいた。
あれ……前にもこんな事なかったっけ?
次第に意識がはっきりとして来る。
「ふァッ!? はだか!?」
直前まで置かれていた状況を思い出し、あわてて
「――ッツ!!」
避けなかったキィと額をぶつけ、痛みで畳を転がる。
わたしに頭をぶつけられたキィのほうは、天井を仰ぐような姿勢のまま不平も不満も示す様子はない。
「いたた……あれ? どうなったの?」
――
「キィが助けてくれたの?」
首をかしげたわたしの問いに、キィは鏡写しのように小首を傾げてみせた。
いつまでもお見合いしていても仕方ない。キィが持ってきてくれたのか、着ていた服は散らばっている。塗り込められた香油を
説明に苦労するかと思われたが、彼は不思議と私とキィが行動を共にしている事に不審も示さず、待ち合わせ場所に隣町へと続く橋を指定した。
「女の子なんだから、夜道には気を付けてね」
そう思うのなら迎えに来て欲しい。喉元まで出掛かったが、伯父達がもうわたしを探し始めているかもしれない。
夜の町を走り橋へと向かう。
夜風に当たるうち、残っていた怪しい香の効果も抜け、頭がはっきりしてきた。
おこもりの風習を守っている訳ではないだろうが、人通りは無い。薄暗い路地から急に魚の顔をした男が飛び出してや来ないかと、おっかなびっくり先を急ぐ。
途中どうにも気になって携帯の電源を入れてみた。拝島伯父と海斗からの着信が数件ある。一番新しいのはユリカからの物だ。迷ったがリダイヤルしてみた。
『あんた今どこにいるの! あのヒゲがうちに来てないかって連絡よこしたよ?』
「えう……ごめんなさい」
少し怒ったような声に、思わず謝ってしまう。
『おこもりがイヤなら、家出とか子供っぽい真似しないでうちに来なよ。一晩くらいなら何とでもごまかしてあげるから、明日になったら素知らぬ顔で帰ればいいじゃん!』
「……そうだね」
伯父の
キィと顔を見合わせる。何か答えを返してくれるのを期待している訳ではない。拘束着を着せられたままなのに、この子は危なげなくわたしに付いて来る。それに、どうやってわたしを地下から救い出してくれたんだろう?
「……る?」
何にせよ、キィがわたしを助けてくれたことは間違いない。今度はわたしがしっかりしなきゃ。
河沿いの道に出た。もうすぐ橋が見える。
ほっとしたところにいきなり携帯の着信音が鳴り、あわてて相手も確かめずに出てしまう。
『今どこ? 迎えに行くよ!』
「橋の近く。でもユリカ、外に出ちゃ駄目だよ」
『まだおこもりとか気にしてんの? 直ぐに行くから!』
ずっと携帯が繋がらないのを心配し、もう自転車で迎えに出てくれたらしい。なんだか気遣いが嬉しかったが、ユリカのことが心配でもある。拝島伯父からの連絡を取ってしまわないよう、携帯の電源を落とす。
先に宗也さんとの待ち合わせ場所に向かうべきかと考えたが、既に近くまで来てくれていたのか、自転車の灯りが近付いてくるのが見える。
手を振るユリカの姿は、河から
「な……!?」
急の事態に頭が追いつかない。
3mほどの太さを持つ水の柱は方向を変え、立ちすくむ私に向かって来る。
「ヴァン……いぷ。みずのまもの……」
「しゃべった!?」
何かを
水柱は十数m先で方向転換し、再びわたし達に向かってくる。
携帯を投げる!
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884676877/episodes/1177354054884680828
護符を投げる!
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884676877/episodes/1177354054884680883
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