~~~
その事実に絶望し、あきらめに身を
「
「
「立てるか?」
革帯を解き、わたしを床に下ろした海斗は、上着を脱ぎ
「頭……
額が割れ、血が流れるままになっている。宮司達の反撃は受けてはいない。自身も
「海斗、まさか……父を……」
何に気付いたのか。つぶやくと美魚は膝から崩れ落ち、泣いているとも笑っているとも付かない奇妙な表情を浮かべた。
「俺は郁海と行く。もうお前も自由に動けるはずだ。自分の行く先は自分で決めろ」
ぶっきら棒に言い残すと、海斗はふらつく私を抱きかかえるように出口へ向かう。
「どうして! どうして私じゃないんですか!? 自由なんていらない!! ずっと私といて下さい!!」
振り返った海斗は、妹に向け少しだけ優しい眼差しで応えた。
「一番強くて一番美しい女神と会えたんだ。
……美しいより前に強いって何だ?
それでも、海斗の部屋で聞かされた告白よりはずっとマシだった。
海斗に支えられ部屋を出る。背後に響く美魚の
§
月が照らす夜の道を、海斗に手を引かれ走る。
「ねえ……海斗、ほんとに伯父さんを……」
海斗は応えない。言いようのない不安が襲ってくる。
それでも、海斗が助けてくれなければ、わたしは訳の分からない
「ちょっと待って!」
「何だよ!?
「そうじゃなくて!!」
もじもじと、上着の前を
「せめて、着るものと靴が欲しいかなって……あっ!?」
「お姫様抱っこってこんなにありがたくないものだっけ?」
社務所にはすぐに手が回るだろう。わたし達が向かったのは、以前おばあちゃんと暮らしていた家だ。
植木鉢の下に隠していた鍵で扉を開けると、懐かしい畳の匂いが迎えてくれた。
仕舞ってあったワンピースに着替え、海斗の頭の傷を手当てする。ずいぶん深い。割れただけでなく、肉を
「これからどうするの?」
親に手を上げた後ろめたさからか、海斗は詳しく話そうとはしなかった。拝島伯父に怪我を負わせて逃げ出したのは間違いなさそうだ。
「すぐには意識を取り戻さないだろうよ。それに、美魚に
「キィは?」
「あの変な女か? 見なかったが、アレは
「……そう?」
下らなそうに海斗は言い切るが、わたしにはその根拠が良く分からない。様子がおかしかったから、勝手に車を抜け出したのだとしても、あの素人民俗学者の青年も放っては置かないだろう。今ごろあわてて探している最中かもしれない。
折を見て警察と宗也さんに知らせよう。わたし達とは違い、キィは
「ふぁッ!?」
傷の手当てのため、海斗の眼前に無防備に晒す形になっていた胸を鷲づかみにされた。いくら助けてもらったからといって、許せるはずがない。思わず引っ叩きそうになるも、手当てしたばかりの額を目にし、必死にこらえた。これだから男ってやつは!!
「ちょ、やめなさい!」
うろたえる私に構わず、海斗はそのままわたしの胸に顔を
「ここを出て二人で暮らそう……」
「……そんなに簡単にはいかないよう」
ならばどうする。連れ戻され、怪しい
どちらも考えられないことだ。海斗の言うように、
わたしに
「海斗も怖かったんだね」
当たり前だ。なりは大きくても私より年下だ。父親相手に
身体を
愛おしさに優しく抱きしめると、不意打ちで唇を奪われた。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884676877/episodes/1177354054884680127
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます