目の前にあるのは偽りだが奥にあるのは真実

この間、ある機械を拾ったんだ。


ちょっと図書館に用事があってね、ギンギツネと一緒に山を下りて、

図書館へ向かったんだ。


その途中に、ある機械を拾ったんだ。


んで、図書館に行ったついでにこれが何なのか、聞いたんだよね。


"すまーとふぉん"だって。


昔いた人間が作った機械だって、ハカセは言ってた。

最初は電源が付かなかったんだけどね、"ばってりー"ってものを

見つければ使えるって言ってたから、ハカセにも協力してもらって、

まぁなんとか試行錯誤して使える様になったんだ。


その"すまーとふぉん"に面白いゲームが入っていたんだよ。


"アニマルバスターズV"っていうゲームでね~、


ギンギツネは宿が心配とかいって先に帰ったんだけど、ボクはその

ゲームをやりながら帰ったんだ。


いつも宿でやっているゲームとは違って、ものすごーく面白いし、

興奮したんだ。こんな面白いゲームが世の中にあるなんて、知らなかったよ。






“キャーーーッ!!”



「助手、今の悲鳴聞こえましたか?」


「森の方から聞こえましたね...。ちょっと様子を見に行きますか」






スマホを見ながら、森の中を歩き続けたんだ。

モンスターがどんどん出てくる出てくる。

まるで水が湧き出るみたいに。

みんな弱いから、レベルがすぐ上がるし

ボクは凄く爽快。

笑いながら、森の中を進んだんだ。






「こ、これは・・・」


「ひ、ひどい・・・」


思わず博士は口を手で覆った。


「し、しかし何故こんなことに・・・・」


「まだセルリアンの方が優しいのです・・・」







ゆきやまの入り口

ふと、前を見るとセルリアンの大群。

本当ならやばいけど、ゲームにもモンスターが沢山。

指でサーッってやるだけで倒せるからいいんだけど。

ものの数十秒で倒せるのがいいよね。

・・・アレ?セルリアンは?

まあいいか。







「助手...、私は少し気分が悪いのです」


「私もですよ...。あんなグロテスクな物見たのは初めてですから...」


「しかし何故...」


「これは私の推測ですが、彼女の"すまーとふぉん"では?」


「何をバカな事を言っているのですか。あんな薄っぺらい物であそこまでは・・・」


「"すまーとふぉん"で殴ったりするんじゃないですよ。中身です」


「中身?」


「良く落ち着いて思い出してください。あの悲鳴が聞こえたのは」


「ハッ...」


「ギンギツネが危ないのです」


「そうですね。彼女とは接触しない様に行きましょう」






ノサッ、ノサッ、ノサッ

吹雪の中はモンスターいないね。

なんでだろう。






「うう...寒いですね」


「頑張るのですよ!博士!」






「ただいまー」


「あら、お帰り」


あっ...、モンスターが出てきた。

また怒られるから、コイツを倒したらおしまいにしよう。



「待つのです!」


「はぁ・・・はぁ・・・間に合って良かったのです」


「は、博士達!?どうしたの、そんな雪まみれで・・・」


「問題はあなたじゃないのです!キタキツネ!」


博士がボクを呼ぶ。一体どうしたんだろう。


「なに?」


「その"すまーとふぉん"を早く我々によこすのです!」


「なんで?」


「いいですか、落ち着いて聞くのですよ。

あなたは、ここへ来る途中、沢山のフレンズを殺しています」


え?どういうこと?ボクはただゲームをしていただけだよ?


「ど、どういうことなの?」


ギンギツネも動揺している。


「そのゲームは、動物をモンスターに置き換えているだけなのです」


「モンスターを倒せば、動物も死ぬっていう原理なのですよ...」


「博士たちの言っている事はデタラメだよ!

じゃあ、このモンスターを一体倒すからさ!絶対に死なないから!」


「騙されてはいけません!倒したらあなたの命が・・・」



ギンギツネは大きな息を吐いた。



「私は・・・、キタキツネを信じるよ」


「そんな、正気ですか!?」



「博士、私はあの子とずっと一緒に居るのよ?

一番信じられるのは長年ずっとやって来た、友達でしょ?

絆があるから、信頼できる。

博士と助手たちだってそうでしょ?」


博士と助手は顔を見合わせた。

何も反論することは無かった。


「いいわよ。キタキツネ」


(だって、ただのモンスターなんだし。死ぬわけないじゃん)


指をモンスターに合わせ横一線にスライドさせた。



「あっ...」


博士が声を上げた。


「あぁ・・・」


助手も声を上げる。


ボクも前を見た。


ギンギツネの体は、横一線に切られ、血が出ている。


ボクは彼女の体を、じっと見つめた。


「大丈夫よ、キタキツネ。まだ、平気よ...」



「さぁ!その機械を早く我々に...」




ボクの、指は勝手に動いていた。


「な!何をしてるのですか!」


「止めるのです!」


ボクは博士達の静止を無視した。



「倒した...」


ボクの身体は達成感を求めていたのだ。


もはやギンギツネは、原型を留めていない。


ボクはゆっくりと博士達を向いた。



「や、や、やめてください・・・」


「ま、ま、まだ生きていたいのです・・・」



ボクの指は震えていた。



「逃げましょう、博士!」


「逃げましょう、助手!」




死にもの狂いで、二人は空高くに飛んだ。


「アハハ、逃げないでよ・・・」


指で彼女達は攻撃しようとした瞬間、"ばってりー"が切れた。

画面は暗黒となった。



「・・・なんだ」


ボクはがっかりした。






「我々は何とか助かりましたが・・・

あのまま彼女を放置しといたら、ますます危険なのでは?」


「そうですね。彼女を何とかしなければ...」


「ん?助手、アレは...」


「もしかして...」


「"すまーとふぉん"では?」


「拾いましょうか」


博士達は、スマホを拾った。


「・・・・モンスターを倒しに行きましょうか」


「ええ。住民を守るのが、長の務めですよね?ハカセ...」



ーーーーーーーー


<元ネタ>


【生き物なんて大嫌い!】


アイテム番号:SCP-304-JP


オブジェクトクラス:Euclid

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