#2 二人との出会い 後編
愛用バイクを走らせながら、友一と一実は近くの公園まで移動していた。近隣の聞き込みによれば、この時間帯なら薗咲公園に散歩しに行っているという情報があったからだ。
「その公園、確かこの前の事件の……」
「あぁ、完全に一致する」
バイクを脇に留め、写真を見ながらやや駆け足で捜索した。やがて噴水の前で佇んでいるチェック柄を着た男性を発見する。
「お前、妻鹿 直哉か」
「そうだったら、何の御用ですか?」
「ちょっと聞きたいことがあるんだ。先日のビョーマ事件について」
そう言うと妻鹿ははぁ、と深いため息をついた。
「全く、勘が冴える人物だけは関わりたくないね」
「……やっぱり、何か知ってんだな」
「邪魔しないでくれる?今から作業を始めたいからさ」
不気味な笑みを浮かべる妻鹿の手首には例のキューブ状の機械がついていた。
『Cost!
銀朱色のコインを入れ、同じ色のオーラに包まれる。やがて姿を現したのは、パズルピースのような皮膚をもつ細身のピエロのビョーマだった。
友一は一実に逃げ惑う人々の誘導をお願いした。
「あぁ、この力が有れば僕の芸術は最高に近づく!!」
「何が芸術だ。ただ自分に酔いしれてるだけじゃねぇか」
「黙れぇぇ!!僕の芸術が判らない奴はバラバラにしてやる!!!」
「……だったらお前の考えも細切れにしてやるさ!」
すかさず懐から黒いベルトを取り出し、銀色のコインを弾いた。
「
『Bet!SURVIVER!』
白いオーラが纏い、紺色スーツにヘルメット、オレンジのレンズをしたヒーローが現れる。
「お前……何を賭けて戦う」
「僕に刃向かった事を思いしれぇぇ!!!」
「追跡して正解だったわね」
物陰から現場の様子を伺う二人。春宮は写真の人物を見せたときの反応が怪しかったので、後をつけてきたのだ。
「しかし春宮先輩。あの戦っている人物は一体、誰何でしょうか」
隣に息を潜める部下が疑問を呟く。春宮は首を横に振り、応えた。
「さぁ、全く見当がつかないわ。新たなビョーマなのか、それとも……」
あの男がいっていた「青年」の事だろうか。どちらにせよ、ここで発言することを春宮は拒んだ。
「ふんッ!!!」
「よっと!」
触れたものを分離させ、それをSURVIVERに飛ばす。SURVIVERは軽快にかわし、徐々に距離をつめてビョーマに数発のパンチとキックをお見舞い。そして、挑発じみた言葉を飛ばす。
「どうした?ただ飛ばすだけだったら、赤ちゃんでもできるぞ」
「貴様~どこまで僕を侮辱させる!!!」
ギリギリなる拳をビョーマは思いっきり地面に叩きつけた。地面や木などがブロック状にくり貫かれ、ビョーマの周りに集まっていく。
「見せてやろう、僕の最高傑作を!!!」
そのセリフと同時にブロックがビョーマの体に合体し、目の前には角張った巨大ビョーマへと変貌していった。
「はぁ!?巨大化!?」
「ハハッ!!もっと僕の芸術を崇めろ!!!」
高笑いする巨大化したビョーマは公園から別の場所へと移動し始めていた。
「チッ!あの芸術野郎。バイクで追いかけるしかねぇな」
全速力で留めていた場所まで行き、愛用バイク、マシンハシローダーに股がって巨大ビョーマの後を追う。勿論あの二人組も。
場所はとある工場地帯へと移る。ドシドシと走る巨大ビョーマ。それをフルスロットルで追いかけるSURVIVER。
「ゼツ、剣を!」
また誰かと通信すると、背中に機械仕掛けの剣が装着した。
「これでも喰らいなぁぁぁ!!!」
巨大ビョーマは瓦礫などを塊にして、追うSURVIVERに向けて次々と飛ばしてきた。右、左と 爆炎を上がるのを避けながらじりじりと距離をつめていく。流石に巨大ビョーマも焦りの色が出始めた。
「これで終わりだぁぁぁ!!!」
そう言って今まで以上に大きな塊が、ごうと音を立てSURVIVERに向かってきた。
「チッ!流石に大きすぎるだろ!」
あれよあれよと言う間に近付く塊。ふとSURVIVERはあの言葉が脳裏に響いた。
(そのコイン、浄化しといたぞ)
「……やってみるか!」
『Bet!STRONG!』
ベルトに今朝渡されたコインを投入した。同時に物凄い爆発が空中で起こる。
「ハハッ!!!どうだい!!!僕の最高傑作になった気分は!!!」
返答しない爆炎に狂笑しながらビョーマは
「あぁ、最高に悪ぃぜ!」
爆炎の中から瑠璃色に光るバイクごとSURVIVERが姿を現した。既に剣にはコインが3枚入っている。
『Count Full!!!excellent charge!!!』
動揺と驚愕の感情が一気に巨大ビョーマに流れ込んできた。
「何!?あれをぶち抜いてきたのか!?」
「さぁて、今度はお片付けの時間だ!」
白く迸る剣を大きく降り下ろし、巨大ビョーマを一刀両断した。叫び声と共にビョーマの姿は消え、悶絶して横たわる妻鹿が現れた。
「お前は1つのピースを間違えた。それは俺に出会ったことだろうな」
「くッ!!!貴様!!」
逃げようとする妻鹿だが、どこからともなくサイレンの音が聞こえ、あっと言う間にパトカーに遮られてしまった。
「妻鹿 直哉!特殊犯罪の疑いで現行犯逮捕する!」
***
「そう。連絡ありがとう」
超高層のタワーの窓辺に立って電話をしているクオーレ。その背後には白いローブを羽織る人物が膝まずいていた。
「“審判”を下しますか?」
その返答にクオーレは首を横に振った。
「まぁ、後は向こうに任せよう。なに心配しなくても、一つくらい
そう言うと白いローブの人物は下がっていった。クオーレは再び窓の外を見る。はぁ、と溜息をつくも、その表情は微笑んでいた。
「来るなら来なさい。僕らは絶対ブレないよ」
***
「一体、BACCARATはこの
「……さぁな。ただ、俺たちはそんな魔の手に目の前で襲われている人を助ける事だ」
一実は護送されていく妻鹿の姿に視線をやった。まだこれは氷山の一角に過ぎないと思うと改めてBACCARATや事件の甚大さ、根深さがひしひしと伝わってくる。すると、パトカーから小柄な男性と服の上からでもわかるくらい実るものを揺らす二人組が、友一と一実の所まで行き、一定の距離で止まった。
「ご協力感謝いたします」
「あなた方は?」
「私は戒都警察署 特殊事件捜索課の
「同じく、部下の
自己紹介する二人に友一は一礼して此方の紹介をした。
「俺は切島友一、こっちは俺の相棒の一実だ」
一実は友一の「相棒」に驚きながら照れていた。態度には出てないが、顔は熱くなっている。当の本人は気付いてなさそうだが。
そして、春宮と深目は再びパトカーに乗り、去っていった。
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