二十章 危険は何処に
「随分とお友達が多いようだ。私と一対一で踊ってはくれないのかな?」
背後の二人を警戒しながら、バースは口をひらいた。
正面では、黒い波のような影の群れが蠢く。
電子の汗がこめかみを伝った。
恐れや怯懦は拳の中へ握りこんだ。
だが、この状況でやせ我慢をしたところで、なにになるというのだろう。
決死の判断で
ところが、〝ハックコア〟の擬似人格はたちまち壊され、減らしたはずの駒は増えた。伏兵が姿を現したのだ。
ゆえに、マテリアルアドバンテージは、依然、
おもむろに影の人垣が割れる。
その空白を、一つの影が切り抜いていた。長い髪を垂らした
「フフッ……。ボーイフレンドは多いほうが楽しいもの。あなたもワタシの許へいらしたら? そうすれば、いくらでも楽しく踊れますわよ」
「踊らされる、の間違いではないかな?」
「フフッ……。そうだとしても、現状どれほどの違いがあるのかしら」
影の仮面の中で、バースは苦笑を返した。
女の言う通りだったからだ。
窮地を乗り切る方法などなかった。このつまらない会話の間にも、敵の包囲網はより強固に構築されてゆき、ログアウト退路さえも断たれようとしているのだから。
それでもバースは、殊勝に言い放った。
「あるさ、違いなら」
「あらァ……?」
「私はまだ、君の手をとりたいと思っている。リードしたいと思っている。それを諦めてはいないし、諦めるつもりもない。私が踏み出し続ける限り、私はまだ君のものじゃないのさ」
影の裏から熱っぽく見つめると、それを感じ取ったのか、女は二の腕をさすった。
「なにを言っているのか解らないわ」
「……勝機はまだあるということだよ」
識者を取り巻く黒い波が、微かに波打った。
「フフッ……。この状況のどこに、勝機があるというの?」
「ここにあるとは言っていないさ」
「なんですって?」
女は咄嗟に天を仰いだ。苛立ちが蒸気のように噴き出し、バースの肌をピリピリと刺激した。
黒い波がさらにぞわりと揺れた。背後の気配が痛いほどの殺気を発した。
バースはその奔流を斬るように疾走した。体躯をバチンと電流が伝った。その姿が消えた。
直後、バースは識者へと肉薄していた。
「……ッ!」
識者はそこでようやく我に返った。
「純粋なのは、君の美点だなッ!」
全体重をかけ、渾身のストレートを打ちこんだ。
割れた黒き海が、傷を塞ごうと迫りくる。その中にある異物を砕こうと雪崩れこむ。
だがその時すでに、識者の身体は、きりもみ回転しながら吹っ飛んでいた。影の仮面が砕け、痛みに顔をしかめた美女の姿があらわとなった。その頭上へ、とり憑いたようにして「Isolde」の文字が出現した。
彼女には懸念があった。
見ていたからだ。セキュリティドアの変容する瞬間を。
あれを目の当たりにしたことで、防爆扉に守られた管制室は、絶対安全の要塞ではなくなった。カメラ映像を遮断されたことで、あの侵入者が排除された確信ももてなかった。
バースの発言は、その潜在的な不安を引きずり出した。「危険が外にある」と認識させることで、彼女の意識を外界に逸らしたのだ。
そこに〝
彼女自身が、下僕を手足のように扱うことができるからこそ、その網の結び目である「Isolde」の意識が離れれば、網は解けるのだ。そしてそれを再び構築するまでには、僅かな空白が生じる。
迫りくる影たちには、今、統率が行き渡っていない。
バースは敵を払いのけながら、再び加速する。
青い雷光が、燐光のごとく体躯を彩る。爆ぜる。消える。
吹きとぶ識者の背後。その雷光が収斂し、影を編む。
手には細剣。腕が霞む。
一の刃は二に、十に、その倍に。
手に、腕に、激しい反動が返ってくる。重い。
電子の火花が四囲を彩る。
「フフッ……」
「くッ……!」
刹那、両者の視線が交錯した。
それを隔てたのは、湾曲した悪魔の爪牙のごとき刃だった。美女の手の中で踊り、弧を描き、百にも至ろうかという斬撃を弾き返す大鎌だった。
〝ハックコア〟を葬ったあと、おそらくあの鎌はすぐに抹消された。そうでなくとも大鎌を作ること自体は可能だった。
それを失念していたわけではない。それでも、ここにしか勝機はなかったし、ここで全力を投じれば、刃が届く確信があったのだ。
「ザンネンね?」
鎌をすぐさま抹消した美女が、着地と同時に幾度もバック転をうって離れた。影の大海の割れ目で、それは止まった。割れ目はすぐに塞がった。
「そういうことか……ッ」
バースは
敵を侮っていた心を恥じた。
そう、侮っていたのだ。
考えてみれば単純なことだった。
彼女の意識が外界へ逸れたとき〝導白触〟の網は解れた。能力は意識と直結しており、そこに自律性は存在しないからだ。
つまり彼女は、能力を処理し続けていた。こちらの動きを予測し、それに基づいて影たちの動きを決定付けていた。
思いこみを利用したのは、彼女も同じだったというわけか……。
初めて出逢ったあのとき、女は一人だった。あとになってバースはシステム内に導かれ、包囲された。
しかし彼女は対峙したとき既に、システムとリンクし、下僕たちへ命令を送っていたのだろう。
能力を解除し、運動能力にだけ処理を費やせば、バースの捨て身の攻撃を防ぐことくらい、造作もないことだったというわけだ。
細剣を固く握りこみ、項垂れる。
「どうやら、勝機などどこにもなかったようね」
影の大海がざわざわと揺れた。嘲笑うようだった。
「ふっ……」
そこに嘲笑と細剣が返された。
知覚者の一人がすぐさま飛来したものを弾いた。
バースは踵を返し、駆け出していた。
その視線の先には――青白い壁。
「……ッ!」
影の群れが波紋を打った。識者の女は、その瞬間まで、バースの思惑に気付かなかった。不意を衝かれたことで、彼女の注意はバースへと縫いとめられていた。
互いの位置関係など失念していた。
「やはり、純粋なのは君の美点だよ」
バースの輪郭が霞み、壁のすぐ正面で再び出現した。地を蹴ると、輪郭が融けた。蒼い壁が影を受け入れたのだ。
やや遅れて、識者の女もまた蒼い壁の中へと融けた。
影の群れは捨て置かれた。
◆◆◆◆◆
彼女は焦っていた。
そして恐れていた。
黒々とした百の箱が並ぶメインシステムルーム。その最奥には、表面に格子模様をはしらせる球体――システムコアが存在する。
あれをクラックされるわけにはいかない。そんなことになれば、マティス・クリーン社は終わりだ。彼女を守ってきた要塞は崩れ、逃亡の日々が過去から舞い戻ってくることになる。
いや、今度こそ逃げることはできないだろう。
マティスは、決して失敗を許しはしない。
彼は、治安維持局に追跡されていた彼女を匿い、最高の遊び場を提供した。マティス・クリーン社のシステムを守護し続ける限り、徒に繰り返される殺戮も容認した。むしろ彼は、そんな残忍なところを買っている風でもあった。
しかしマティスは、忠告もした。「失敗は許さん」と、厳かに言った。
その度に、彼女の眼前で生きた人間を殺した。それが生ける屍となる場面を、脳の襞にすりこむように、繰り返すのだった。
彼女にはそれが恐ろしくてならなかった。
殺される直前まで、悲鳴に裂かれ、慟哭に震えていた人間が、まったくの感情を失くした人形となるのだ。感情に溺れていた瞳が涸れ、意思に震えていた肉体が鉄のように固まるのだ。
マティスはその場面を見せつけるばかりで、それ以上の忠告はしなかった。それどころか彼は、一人を人形へと変える度に「ハッハ!」とさも愉快そうに笑った。
意味が解らなかった。
マティスの言動は「貴様も失敗すればこうなる」という脅しのように思える一方で、失敗を口実に「貴様を奴隷にする瞬間が愉しみだ」と有頂天になっているようにも思えた。
彼女は最高の自由を得たはずだった。ところがマティスの狂った一挙手一投足が、彼女の心を刺々しい鎖できつく縛り付けた。
その束縛から逃れる方法はなかった。社会を敵に回すのはまっぴらごめんだし、マティスに歯向かうわけにもいかなかった。
だから彼女は、束縛を感じぬために、自身の力を磨き上げることを選んだ。そして力は着実に身についていった。力は進化した。形而宇宙にアクセスするだけだった力は、二つの能力を派生した。
ゆえに、自分には絶対の力が宿っていると妄信し続けることができた。それが彼女の
それなのに。
「それなのにッ!」
美しい相貌が歪み、電子の床が波打った。痩躯が跳ね上がり、瞬間移動を繰り返した。
彼我の距離は急速に縮まる。
処理速度は、彼女のほうが格段に上だ。追いつけない距離ではない。
それでも彼女は慢心しなかった。
一度ならず、二度までも欺かれた。慢心が、彼女を守る「絶対」を削ぎ落とした。この胸に、焦燥も憂慮も忍び込ませはしない。
彼女は四肢を解いた。
形而宇宙における形態変化能力が、手足を糸のごとく解れさせたのだ。
それは鞭のように激しく、蛇のように狡猾に、侵入者を打ち据えた。
ランダムに歪曲する触手は、躱す空間を殺しながら、相手の皮膜を着実に破壊した。影のようにしか見えなかった背中から、斑に蒼白い肌が覗いた。
女はさらに背中から翼を生じさせ、最高速を維持する。
そして五度目の
「フフッ……」
勝利の確信がこぼれた。
一たび翼を羽ばたかせると、女の身体が回転した。そのまま、拘束した影を後ろへと投げ飛ばした。
「ぐああッ!」
影が電子の筐体に衝突して悲鳴を上げた。
女は自身の形態を戻しながら、頭を抱えた。脳を引き裂かれるような、ひどい頭痛がしていた。
無理からぬことだった。手足を触手に変え、翼まで生やしたのだ。相当な負担がかかっただろう。
だが、これで平穏は保たれる。所詮、痛みは刹那だ。死のような永遠ではない。
「フフッ……」
侵入者の許へと歩み寄る。筐体に横たわった頭が、僅かに傾いだ。
「……随分と余裕だな、姫君」
女は目を眇め、侵入者を見下ろす。余裕綽々としているのは、むしろこいつのほうだと女は思った。まったく癇に障る態度だ。
「嫌味な男は嫌われますわ、よッ!」
女はその顔面を蹴り上げた。
「がッ……!」
影の首ががくんと揺れ、顔面にノイズがはしった。皮膜が電子の塵となって消えた。銀眼球の相貌があらわとなった。頭上に表示されたのは「Birth」の文字。まったくおめでたい名前だ。
足許に伝うグリッドを、女は自身の肉体へと浸潤させた。今、ここですべての情報を解析するのは安全上不可能と言っていいが、瞬時に幾つかの情報は取りだせた。
すぐに違和感を覚えた。どれもくだらない情報に思えてならなかったからだ。
「へぇ……」
どうやら、黒い
「……用心深いこと。だけど、相手が悪かったようですわ」
「その言葉、そっくりそのまま返させてもらうよ」
「減らず口を。どうやら早く死にたいようですわね」
女は銀眼の男の頭を掴んでもちあげた。男は一切の抵抗を見せず、ただその無機質な視線だけを返した。
「おっと、逸るのはよくない。君の悪いところだ。私には仲間がいる。その情報を引き出さなくていいのかね?」
頭を握る腕に力をこめる。相手の肌に白い火花が散った。小さい呻き声が聞こえてきた。好い気味だった。
だが、この男の言った通りだ。すぐに殺すのは賢明でない。仲間の情報は引き出しておく必要がある。特にあのセキュリティドアを破った者は危険だった。
「……じっくりといたぶってあげますわ」
「そういうプレイは、あまり好きじゃないんだがね」
女は暗い眼差しで睨みつけた。
その一方で、こめかみをちろちろと舐める焦燥を感じていた。
この勝負は間違いなく勝った。処理速度ではこちらが勝っているのだし、眷属たちも〝導白触〟の支配を逃れたとはいえ、己の意思で続々とメインシステム内へ進入しつつある。取得したデータに罠が仕かけられている様子もない。
それなのにこの男は、えらく飄々としている。絶体絶命の危機に瀕しているはずなのに、薄ら笑いまで浮かべる。まるで勝利を確信しているかのように。
「なにを、隠しているの?」
「隠す? なにを言っているのか解らないが、そう思うのなら、私をクラックすればいいのではないかな」
何故だ、なぜだ?
女は当惑する。
この男の言っていることは、至極真っ当だ。隠している情報は抜き出してしまえばいい。知覚者として活動できる者は、例外なく
そうと解っているのに、躊躇してしまう。ダミーの下に、得体の知れないプログラムが隠されているように思えてならない。
この薄ら笑いはなんだ。どうしてこんなにも余裕なのだ。
それでも取るべき行動は決まっていた。恐るおそるダミーを剥がしにかかる。
また白い火花が散る。腕にグリッドが伝う。
すると銀眼の男が「ああ」と、間の抜けた声を漏らした。
「そういえば、隠してはいなかったんだが、改めて忠告すべきことはある」
女の意識が一瞬、男の許へと逸れた。しかし彼女は、今度こそ迷いなく作業を続行した。
データの抽出が問題なく進行していたからだ。
男の言動は、すべてハッタリだったのである。時間をかせいで反撃の機会を窺っていたのか、生の感覚を少しでも引き延ばしたかったのかは解らない。
だが、真意などどうでもいい。重要なのは、この男にもう害はないということだけだ。
焦燥はほとんど感じられなくなっていた。
ところが、ほんの少しばかり違和感のようなものが付きまとう。彼女にはその意味が理解できなかった。理解する必要もないように思えた。バカバカしいことだと一蹴した。
「……外には気をつけたほうがいい」
グリッドが腕を伝い、美麗な双眸に流れて瞳を緑色に染め上げた。流れ込んでくる情報の奔流から、一部を掬いだして取りこんだ。「BORDER」の文字が明滅し「世界を壊して」と誰かが言った。見目麗しい若い女が、獣のように吼えた。長髪の男が「ジェン」と猫撫で声を発した――。
それは永遠にも似た刹那だった。この銀眼の男が生きてきた軌跡だった。勝利を確信させる真実だった。
女はその快楽に震えた。虚仮にされた分、勝利の悦びもひとしおだった。
今度こそ、めちゃくちゃにしてやれる。破壊衝動が胸を侵した。
「フ――」
女の手の中から、男がこぼれ落ちた。どさりとその身体が電子の床に投げ出された。
それを彼女が訝しむことはなかった。音を拾うことさえできなかった。
なぜなら彼女の脳は、一切の情報を断たれ、白い瞬きに引き裂かれていたからだ。
「あ、ア、アA……aあ阿アA亜Aaaaァ――」
ノイズ混じりの断末魔が轟いた。
メインシステム内にアクセスした眷属たちが、異変を察して、銀眼の男へと襲いかかった。
しかし彼らは、次々と電子の塵を噴き出しながら消滅した。識者の女もまた、その破滅の坩堝へと呑み込まれていった。
◆◆◆◆◆
一人取り残されたバースは、痛む頭を押さえながらシステムコアへと触れた。
凝集された情報を分解し、改竄する。マティス・クリーン社の築き上げてきた「クリーン」な歴史が、崩壊を始めた瞬間だった。
『まにあったな』
傍らに歪な影が生じ、戯画的な吹き出しでメッセージを伝えてきた。頭上に浮かんだアドレスは「Traitor」とある。
バースはそのメッセージを、コンピュータから銀眼に格納し直しながら、クラッキングを続行する。
「遅い。危うく死にかけた」
幾らか沈黙があってから、新しい吹き出しが表示される。
『ゆるせ。かなりいそいだ』
タイピング速度をはやめるためなのか、その文章はひどく稚拙だ。あるいは単に馬鹿なのかもしれない。相手が相手だけに、その可能性は否定できなかった。
なにせジェンだ。幼い頃から一級の教育を受けてきたはずなのに、BORDER一の阿呆と誰もが認める男である。
だが、危殆に瀕したバースを救ったのもまた彼だった。
バースは識者の女と、天地の攻防を繰り広げる際に、細剣を足場として飛翔したのだった。あのとき、細剣をすぐには抹消しなかった。なぜなら、あれは彼の足場であると同時に、メッセージだったからだ。
バースは彼女の強固な包囲網と、彼女自身の力を前に、敗北をさとっていた。作戦立案当初、〝ハックコア〟の存在は考慮されていなかった。だが、昨日の攻防で敵の力を思い知った。〝ハックコア〟は必須だと確信した。だから、残存数が減ったときは絶望した。
しかし絶望して足を止めるのは、ただの腰抜けだ。途方もなく巨大な敵に立ち向かうと決めたとき、臆病者は殺してきた。
世界を壊す。
誓いと行動こそが、それを真と成し得るものだとバースは信じた。
そして、ともに修羅の道を歩んできた仲間を信じた。
相手の戦力を地道に削ぎ落としながら時間をかせぎ、ジェンにメッセージを送信したのだった。〝ニューサンス〟の影響が強くても、ジェンがマティスと交戦する時間が長引いても終わりだった。分の悪い賭けだった。
だが、賭けに勝ったのだ。
『むかえ、ひつようか?』
「必要ない。迷彩がある。それよりマティスは殺せたか?」
この質問は、我ながらナンセンスだと思った。マティスを討てていなければ、ジェンが管制室へ急行できるはずなどなかったからだ。
ところがジェンから返ってきたメッセージは予想を逸していた。
『おそらくまだ』
「おそらく?」
不明瞭な返信に、嫌な予感を覚えた。物理タイピングによって生じるラグが、じわじわと苛立ちを募らせる。
それはジェンの逡巡のようでもあった。
やがて届いたレスポンスは、やはりその嫌な予感に類するものだった。
『まてぃす、こうせん、くもわたり』
バースは小さく嘆息した。しかし形而宇宙で発せられた吐息を、ジェンが認識することはない。バースはそれをメッセージラインに載せなかった。
代わりにこう返答した。
「奴はマティスを殺せるか?」
これには意外なほど早い返答があった。
『できる』
「わかった」
システムコアのクラックは、もう充分に果たした。役目は終わった。あとはマティス・クリーン社を出るだけだ。
「長話が過ぎた。お前は二人を連れて早く脱出しろ。〝雲渡り〟のことだ。派手に暴れているだろう。直に治安維持局が騒動を嗅ぎつけるぞ」
『わかった』
その返答を最後に「Traitor」の影は、ゆっくりと背景に滲んで融けていった。ログアウトしたのだ。
バースもまたシステムルームをあとにした。
かくして、また一つの戦いが幕を閉じた。
その頃、現実世界では、空を覆う巨大な館が歪んだ鐘の音のような軋みを発していた。
それと呼応するように、雲の底へ沈んだはずの太陽が天を焼いた。科学の雲に窒息した世界を、灼熱の奔流がまばゆく照らし出した。
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