てけてけ
ある日の帰り道、古和杉流のバス停から家までを歩いていたときのことだった。
「ふんふんふ~ん♪9回裏の関取~流行りはチョベリバ~♪」
てけてけてけてけてけてけてけてけ…
「…ん?」
呑気に鼻歌でもかましながらふらふらと歩いていると、遥か後方からではあるが、ものすごいスピードで何かが近付いてくる音がする。足音のようにも聞こえるが、またそれとは違った奇妙な音だ。少し気持ち悪い感じもしたが、まあ特に気にするようなものでもなかったのでそのまま歩き続けることにした。
「ふんふんふ~ん♪センターヒットのPK戦~ドスコイドドドスコ~イ♪」
てけてけてけてけてけてけてけてけ…
「…やかましいな」
最初は気にならなかったが、ここまでしつこいとそろそろやかましく感じてきた。というかいつまで後ろにいるんだろう。少なくとも10分は歩いているが、その回転数の割に一向として追い抜かれる気配がない。一概には断定できないが、恐らくそれとの距離はほとんど変わっていない気がする。
てけてけてけてけてけて
「なんだお前!!!!!」
ものすごい声量をもった叫び声とともに後ろをバッ!と振り返る。目測で数メートル後方だろうか、何やら地面に突っ伏したような形でうねうねとうごめく人影が見える。…ん?もしかしてあれ突っ伏してるんじゃなくて…下半身がないのか?
「あの…大丈夫ですか?下半身どこ行ったんですか?きき救急車、救急車呼んだ方がいいですか?」
「あ、えっと、あの…その、結構です」
思わず駆け寄って安否確認を取ると、蚊の鳴くような声オブ蚊の鳴くような声で弱々しい返答が来た。
「え、でもほら、下半身が」
「あの、えと、これ元々とれてるタイプのやつなんでその大丈夫です」
「なにそのタイプこわい」
詳しく話を聞くところによると、かの有名な「てけてけ」さんであることがわかった。その後、彼はやはりてけてけと妙な足音を立てて、何故か申し訳なさそうに闇夜へと消えていった。とりあえずLINEは交換した。
「そういえば今日、あなたがこの間に知り合ったっていうてけてけさんの下半身を見たわよ。あなたもああなってしまえばいいのに」
「ヒェッ」
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