番長皿屋敷
「いちま~い、に~ま~い、さんま~い」
「あの」
「よんま~い、ご~ま~い、ろくま~い」
「ちょっと」
「ななま~い、はちま~い、きゅ~ま~い…あれ…一枚足りない……」
「だから」
「……お皿は何処だ!!」
「誰だアンタ!!!」
夜中に喉が渇いて目が覚めたので水でも飲もうと階下に降りた矢先がこれだ。キッチンを覗くと見たことのない女が死に装束を着て家の戸棚にある皿を数えていた。
「いちま~い、に~ま~い…じゃないんだよ!人ん家の皿数えるってどんな性癖してんだ!」
「性癖じゃないわよ」
「殊更に気持ち悪いだろ!あと家の皿はもっと多いからな!?」
「あらホント、いっぱいあるね」
「何でこの状況下で冷静なんだよ」
取り敢えず不法侵入者なので、お近くの交番へと通報をさせていただ
「待ちなされ」
「えっ」
話を聞くところによると、この方はかの有名な番町皿屋敷に登場するお菊さんだそうだ。言われてみれば、彼女の着ているお洒落な服から時代の流れというものを感じるが、雰囲気的にはジャストミートで日本の幽霊さんだった。
「あれ。そういえば
「それお岩さんね」
どうやら先日に引き続き今度は僕が地雷を踏み抜いてしまったらしく、お前マジ殺すぞと言わんばかりの視線を向けられたので「あ、お茶いれてきますね」と退路を作る。お菊さんも「あら悪いわね」とか言ってちゃっかり席についていた。何なのこの人。
それからしばらくお菊さんと談笑していたら、妻が起きてしまったらしく階下に降りてきた。
「…夫婦仲良く同じ屋根の下で暮らしてるっていうのに良い度胸じゃない」
「待ってこれ違う」
「ひどい!あなた独り身って言ってたじゃない!!」
「これ以上ややこしくしないでお願いホント待って違うこの人あれなの幽霊のお菊さん」
「
「ひぃっ」
そこから先の記憶は無いが、朝起きるとお菊さんから
『大変失礼しました』
というLINEだけ送られてきていた。あの状況下だと修羅場になることは明白だったのに、それでもLINEを交換した自分の執念に感心を抱くと同時に、全ての恐怖がこの一言に詰まっているように感じて気が気でなかった。
「あの…僕はあの後どうなったんでしょう」
「世の中には知らなくて良いこともあるのよ」
「サイデスカ」
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