ドッペルゲンガー
「…あれっ」
「…あれっ」
この日、僕は僕に会った。小説家を気取った下手くそな比喩表現とかそんなんじゃなくて、シンプルに。
「……僕ですよね?」
「はい、僕はあなたです。で、あなたも僕です。僕はあなたで、あなたは僕です」
「待って、ややこしくしないで」
整理しよう。
「ドッペルゲンガーってやつですか?」
「まぁ見た感じそのようですが………しかしおかしな話ですね」
「僕は慣れてますよ」
「いえ、そういうことでなくって」
僕の話によると、ドッペルゲンガーは自らが偽物という自覚を持っているらしい。それを理解した上で、自分が本物に成り代わるため、その本人を遅いに来るとか。
が、
「僕は僕を本物だと思ってます」
「僕も僕を本物だと思ってます」
どうにも埒が明かないようだ。
「っていうかですね」
「どうしたんです?」
「ドッペルゲンガーって、自分が本物になるために、本物の存在を否定するんですよね」
「えぇ、恐らく」
「それで、僕らどっちも本物ですよね」
「えぇ、恐らく」
「別にそれで良くないですか」
「確かに」
僕が僕なら相手も僕なので、丸く収まってしまった。それが一番ではあるけど。
「……そうだ。僕には超絶美人の妻がいるんですよ」
「奇遇ですね、僕もです」
「………もしかして」
スマホをパッと見せる。そして、スマホをパッと見せられる。
「「あっ」」
妻もドッペルゲンガーだった。ちょっとクスッとなったところで、すかさずLINEを交換して、また後日会うことになった。外は他人が腰を抜かすと思うので、我が家でという結論に落ち着いた。
「ねぇ見て見て。これ、僕のドッペルゲンガー的な人」
「ホントにそっくりね。取っ替えても新鮮味が無さそう」
「冗談に聞こえねぇよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます