八尺様



 ある日マンションの地下駐を自分のバイクに向かって歩いていると、隣人さんが購入したバギー(2m超え)から、恐らく女性であろう人物が白い帽子を覗かせた。


「ぽぽぽ、ぽ、ぽぽぽぽぽ」


 そんな不思議な笑い声を響かせていた。まぁ知っている人なら誰でも分かる。かの有名な八尺様だ。


「…………………」

「ぽぽぽ、ぽ、ぽぽ……ぽぽぽ、ぽぽ?」


 しかし彼女は気付いていない。自慢の長身を生かそうとするあまり、バギーを選んでしまった失敗に。


「見えてますよ、厚底」

「……………あっ」


 バギーということはタイヤが馬鹿みたいにデカイということなので、つまり必然的に車高も上がるのだ。そのスカスカの隙間から見えたのは、八尺様の足ではなく、とてつもなく太い厚底のブーツだった。


「ちっ……違うの!これはその………違うの違うの違うの違うのぉ!」

「分かりました、分かりましたから。で、何が違うんですか?」

「私はもっと大きくなるの!今はまだ子供だから…その、あれだけど!これから頑張って八尺超えるの!八尺様なのぉ!!」

「八尺超えたら八尺超え様じゃないですか」

「そうじゃなくてぇ!!」


 彼女は完全にバギーの後ろから出てきていた。見た目はもう見るからに幼女で、身長は120cmほどしかない。八尺っていうか、四尺だった。


「よくその身長で八尺とかほざきましたね」

「半分で何が悪いのよ!」

「色々と問題だらけでしょう」


 楽しかったので少し遊んでいたら大号泣しだしたので、さすがに幼女を泣かせてはまずいかと思い、取り敢えずなだめた。


「ありがとう励ましてくれて……。あなた、最初はクズ男かと思ったけど、案外優しい人なのね!」

「言いやがったな」


 また口論になりかけたが、そこはグッと呑み込んで、LINEは持ってなかったからメアドを交換した。後日LINEを入れたらしく、友達かも?で浮上してきた。


「……ねぇ、ちょっと見て」

「誰かしら、この女の子。トップ画の写真ブレすぎて幽霊になってるじゃない」

「幽霊なんだけど」

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