悪魔と契約、悪魔の心
契約
夕日にそまる奥多摩湖
冬馬が小学校にあがるまえだった。
母が急に妹と自分を家から連れ出した。
身寄りのない母は親友の家族を頼り保護を受けたようだ。
なぜそうなったのかはわからない。
ただしつけのためだと父親が冬馬をときには叩くこともあったのは確かだ。
母は精神的な病気だったのか
家事がいっさい出来なかった
仕事も続かない
やがてやっていた水商売もクビになり生活がなりたたなくなった。
冬馬は星砂家が当事、経営していた子供園に妹と送られた。
桜がしげる林は変わらない
あの頃とも
あの人と見た時とも
『もし限られた命を伸ばせるならお前はなんでもするか?』
突然、声がきこえた
「誰だ?なぜ俺の病を知っているんだ?」
『私は神にあたいするもの。私はそなたを不死身にも出来る』
「いらねえよ。でもそうだな娘達がみんな子供産むまでは生きてえな。」
『お前の目玉が欲しい。』
「目玉なんて言わねえで脳ミソでも心臓でも持っていけ。」
金色の光が注ぎ冬馬は気を失なった。
気がつくと霧で煙る湖畔に倒れていた。
俺つかれてるな変な夢みちまった。
「追い出されて当然でしょ。ハル、しっかりトウマを見張っててちょうだい。」
トウマが住んでいる蝶屋敷の当主、アゲハが息子にいいつける。
ただしくいえばこの山手にある風変わりな洋館にトウマは行き場所なくなるたびに世話になっている。
トウマが一時落ち着いた時期に一緒にいた娘もここにいる。
「帰ってきたんだ。また女の所に行くのかと思ってた。」
大きなお腹に手をおいてユックリ歩いてくる。
その横にいる少年はなにも言わない。
アゲハの息子のハルだ。
トウマの目付役をおしつけられて迷惑そうである。
「体調はだいじょうぶか菜穂?」
「だいじょうぶ。瑠璃姉さんとアリサは元気だった?」
「アリサはまだ回復してないけどな。」
瑠璃も菜穂も幸せに育って子供にも恵まれた。
一人ですごしたアリサはつらかったことだろう。
愛した女達はトウマを裏切った。
菜穂の母親、紫音だけだ。
つい情に負けて女性を助けるトウマを暖かい目で見てくれた。
いや本当は追いつめられていたのかもしれない。
末期ガンにおかされ再起を迎えた時に紫音の心はトウマになかった。
かつて愛した男性のポスターと音楽が彼女のそばにあった。
俺みたいに薬におぼれたバカがいたら迷惑だと自らバンドを去った男…………トウマも彼を知っているからなにも言わなかった。
紫音の葬式にきた彼はくたびれた黒いスーツをきていた。
今でも菜穂の誕生日に花束と共にプレゼントが来る。
お前のほうがまともだよ智也…………俺のほうが最悪だ。
蝶屋敷の窓から見える海をみながらトウマはつぶやいた。
ここからバンドははじまった。
そして去年、病気が発覚しトウマもおりた。
体に痛みがはしった……
『お前が死んだら体を貰う。なにもとらないかわりにお前は私のナイトになれ。この世界に迷いこんだ大切な石版を集める。お前の使命だ。』
声がきこえた……
「お前は……死神か?」
『私は闇の守人、闇の門を守るのが仕事だったがあるよく深い者により私は分散させられてしまったのだ。私の肉体はその者が破壊した星と共に亡くなった。私には器が必要だ。お前の体は私の器となる。』
景色が変わった
そこは赤と黒の世界で溶岩の海に黒い岩がういていた
あちらこちらから火があがる
そらからは不気味な声がふってくる
『お前の罪の痛みを味わうがいい。』
ドーンという音
髪の長い女が笑っている
全身に宝石をまとい
黒い髪をなびかせている
『トウマ、私きれいでしょ?』
女の枯れ木のような手が冬馬の胸ぐらをつかむ
気がつけば女の影につかまれていた
体じゅうが痛い……
『誰よあんたたちトウマは私のものよ。』
女が牙をむき回りを噛み砕くたびにトウマの体に痛みがはしる
息が苦しい
『やめなさい貴方たち。』
気がつくと後ろに天使がたっていた
「シオン…………」
『トウマあなたも愛してるけど智也も愛してるいるの。』
白い翼に包まれた
あったかい……
「このヤリチンバカ男おきなさい。」
目をあけると黒縁メガネにウェーブヘアーの女性のドアップ
ガツン!
頭にヘッドアタックされた
「イテーな石あたま。ワッなんだ?」
尻にいわかんを感じ飛び起きる
「おめえなあ人がくたばってる間になにすんだよ。」
「起きないからお尻をたたいただけよ。」
酷い扱いである。
「俺のケツはうまかったか?」
柴犬の頭を撫でると尻尾をふった。
闇の守人か…………夢がみょうにひかかった。
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