(14)
「なぜ止めるのです。敵はまだ生きているのですよ?」
「どう見たって、斬るたびに増えようとしてるだろ」
このままじゃドツボだ。
壮大な美しい峡谷だったはずの場所が、密集した八つの巨体で埋まろうとしていた。
絶景もへったくれもなく、目の前には一面、触手を生やした白紫の肉壁がそびえている。
「ですが、今のうちに斬らねば」
「わかってるよ。でも永遠にこれをやってたら、逆にやべえって」
惑星すべてがこの巨大マンイーターで埋め尽くされてしまうだろう。
そうなれば、結局マナは枯渇し、ここは死の星となるはずだ。
ガドッシュの力では、それを阻止することはできなそうだ。
絶望的。
「では、どうするのです?」
「考えてる」
そうしている間にも、八つの巨体はそれぞれの形を取り戻していく。
どうする、どうする?
落ち着いて考えろ。絶望は脇に置いとけ。
やばいのは明白。増殖中は攻撃してこないから、斬り続ければとりあえずは安全だ。だが何百という数になったこいつらを相手にするのは無理だ。
じゃあどうすればいいんだ?
剣で斬る以外の方法が何かあればいいが、そんな方法なんて──。
「あ……」
思い出した。この異世界に来てからいろいろありすぎて、すっかり忘れていた。
「勇者様?」
「ガドッシュ、魔法だよ! 光魔法を使えばいいんだ!」
なんでさっさと思い出さなかったんだろう。馬鹿じゃん、俺。
異世界に来る際、女神様から与えられたもの。
聖剣、勇者不屈、転移石。
そして最上級の魔法。
光魔法がどんな性質をもつのか、どうして最強とうたわれているのか、俺はほんの少しだけ女神様からそれを聞いていた。
ガドッシュが納得の声を上げる。
「なるほど、それならあるいは──ですね」
「だろ? きっと完全に消滅させられるはずだ。だから使い方を教えてくれ!」
そう。その魔法の使い方もガドッシュから聞くことになっていたのだ。
忘れていたせいでぶっつけ本番になったが、信じて、やるしかない。
八体の巨大マンイーターが、むくりと屹立する。
その姿はまるで、ヤマタノオロチのようだ。
「まず、胸に手を当て、こう口にするのです!」
ガドッシュの早口のレクチャーに、俺は従った。
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