(13)


 どんと踏み込み、体をひねり、青の巨刃を振り抜いた。

 ────!!

 世界のすべてを真っ二つに断つ。そんな感覚だった。

 唾液を垂らしながら、赤い口が突進を続ける。

 俺に、ではない。

 砂礫まみれの地面に、だ。

 ドドドド……と、その巨体が重い地響きとともに崩れた。

 触手の数々が白目を剥き、力を失ってこうべを垂れる。

 沈黙。

 静寂。

 か、勝ったらしい。

「やったのか……いや、やったよな、ガド? 俺たち、やったんだよな? 世界、救ったんだよな!」

 歓喜に震える手でガッツポーズをしつつ尋ねると、元の大きさの剣に戻ったガドッシュは誇らしげに「はい、当然で──」と答え、言い切る前に口を閉ざした。

「おい、どうした? 嬉しくないのか?」

「……まだです」

「は?」

 メキメキと巨木の幹がさけるような音がした。

 振り向くと、倒れていたマンイーターの胴の部分から、新たな首が生え出ているところだった。

 もう一方、落ちていた上半分の切り口からも、根を思わせる触手の束が出現し、地面に吸い込まれるようにもぐっていく。

 グロテスクな光景だった。

 まだ、生きてるのか。

「また斬るのみ、です」

「……ああ!」

 ──天地断つ聖刃ホライゾン・オブ・ザ・ガドッシュ

 長い刃を上段に持ち上げ、倒れた状態の二体をまとめて斬る。

 だが今度は、分断された四つ切り口から、新たな根や首、胴が生えてくる。

 増殖?

「何度だろうと!」

「あ、ああ……」

 さらに息巻くガッシュに、俺は嫌な予感がしつつも応じる。

 横凪ぎ。

 スライスされた巨体は再び崩れ落ちる──が、それぞれの切り口から、また欠落した部分が新たに生えはじめる。

「百度だろうと!」

「い、いや待て待て!」

 より一層エキサイトするガドッシュを制止する。

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