(12)
勇者不屈?
確か女神様が与えてくれた、精神系のスキルだよな。
「これが、そうなのか?」
ガドッシュは続けた。
「その能力は勇者様の心が恐怖や絶望に支配されそうになった時に発動するのです。勇者様はその能力によって、恐怖してもなお、自分の本当の意志に則した行動を取ることができるのです。具体的には──」
「わかった、わかった。具体例はもう充分あるから!」
脱獄しようとしたり、アギーに話しかけようとしたり、崖から落ちたり!
「それらは勇者様が『恐怖や絶望さえなければ実行する』と、潜在意識下で思っていることなのです。『勇者不屈』は一時的にそれを代行するだけです。だから今、心の奥で勇者様はこう思っているいるはずです」
行け、と。
立ち向かえ、と。
「……そうかよ」
黄色い光が消えた。まだ敵までは距離がある。
だが消えた。
足が自由を取り戻した感覚がある。
どうしてそうなったのかは、わかってる。
「────やるよ」
俺は自分自身の力で、強く一歩、踏み出した。
「ぶったぎってやんよおおお!」
自分の意思で、さっきより速く、大地を駆けた。
「さすがです、勇者様!」
「お前、あんなでかいのでも斬れるんだろ? だから行け行け言ったんだろ?」
「もちろんです。ボクを何だと思っているのですか。聖剣ですよ?」
巨大マンイーターの懐に迫る。少しモタついたせいで、敵は体勢を整えつつあった。
「勇者様、脇に構えるです!」
脇、とは脇構えのことだろう。言われたとおり、俺は居合抜きの姿勢でガドッシュを構えた。
敵が胴をしならせ、その大口をおもむろに開く。
思わず怯みそうになる。
だが、走る。
相棒を信じて。
「悪しき者よ、覚悟するです!」
ガドッシュが叫ぶ。
「『天地断つ
すると構えた刃が炎のような激しい青を放し、遠く彼方まで延びた。
マジか! いけるぞ、これなら!
敵の口が、向かってくる。
「おらあああ!」
俺は叫んだ。
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