(9)

「ガドッシュ、早く答えろよ! 何がどうなってるんだ?」

 目の前で繰り広げられる光景に、ただならぬものを感じ、思わず声を荒げた。

「わからないです! でも邪悪なものが、一気に増しているのを感じるです! 勇者様、これは今のうちに──」

 ガドッシュが言い終わらぬうちに、キノコの竜巻がカッと強い閃光を放った。

 同時に爆風を思わせる衝撃波が襲ってきて、俺は数メートル後ろに吹き飛ばされ、ごろごろと砂礫にまみれた。

「ガドッシュ!」

 ぺっぺっ、と口に入った砂を吐き出しながら、慌てて手からこぼれた相棒を拾う。

「勇者様、あれを見るです!」

 声に従い顔を上げると。

 千を超えるキノコの大群は消失していた。

 代わりに、とてつもなく巨大なキノコ型のバケモノが屹立していた。

 まるで特撮映画の怪獣。現実世界の高層ビルをしのぐ巨体は、やはり白と紫。胴の側面から無数の触手が生え、ゆらゆらとイソギンチャクのように揺らめいている。触手の数々に、どこからともなくマナが流れ込んでいる。

「ちぃっ、下等生物め。ついにこの惑星そのものからマナを吸い始めたようです」

 ガドッシュが無い舌を打つ。

「もしこのまま放っといたらどうなる?」

「奴はさらにマナを吸って肥大化し、いずれきっと、この惑星ごと枯らしてしまうです。その後、奴がどうなるかは断言できないですが」

「つまりハトラからマナが消えるってことか」

「そうです」

 駄目だろ、それは。

 俺の食いぶちがなくなってしまう。

 いや俺だけじゃない。親方や先輩たちも仕事を失ってしまう。というかマセキが採取できなくなったら、ネウトラは──惑星サーム全体が、混乱の渦に飲み込まれてしまうんじゃないだろうか。そして。 

 ふと脳裏に浮かんだのは、この世界にとっての最悪の結末だった。

 不足したマナをめぐる世界大戦──。

 それだけは、絶対に阻止しなきゃ駄目だろ。

「やっぱりこの戦いは、世界を救う戦いだったんだな」

 呟くと同時、

「勇者様、気をつけるのです!」

 ガドッシュが叫んだ。

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