(6)


 くそ、躊躇ってる時間はねえ。

「こ、これで、どうだぁあああ!」

 ぐるん、と体をターンさせながら、その遠心力を利用して剣を大きく振る。

 俺が思う『回転斬り』とはそんな感じで、ガドッシュを強く握り、半ばやけくそぎみにそれを体現してみた。地面が荒い砂礫で覆われているので、ターンもやりやすかった。

 スパ、と敵の胴を剣先が滑るような感触が、グリップを通して手に伝わる。青い輝きが刃の動きとともにいくつも閃き、無数の残像をつくる。

 一周して振り返る。

 すべての敵の首が、一気に斬り跳んだ。

「すげぇ、何だよ今の。俺がやったの?」

「もちろんです! 多少、ボクの力も使ったですけどね」

 ガドッシュは誇らしげに言った。

 こいつの能力の一つに、『聖なる無限残撃ホーリー・インフィニティ』というものがあるらしい。

 太刀筋に沿って、青い光の数々が広範囲にわたり追加斬撃をあたえるという能力で、極端な話、俺のような素人が攻撃をはずしてしまった場合でも敵を斬ることができるそうだ。

 そんな神がかった強力な能力により、俺たちは白紫キノコの群れを殲滅した。

「なあ、こいつらって何だったんだ?」

 俺は尋ねた。

 ガドッシュはさっき、『邪悪なものを感じる』と言ってこいつらを敵だと断定していたが、具体的にどういう存在なのか気になった。

「わからないです。けど、ボクが邪悪さを感じたということは、勇者様とボクがこの世界に来た目的と関わってるということは確かです。女神様に誓って、間違いないです」

「そうか」

 つまりそれはガドッシュに索敵能力があることを意味する。……だったら数日前まで『疑わしきは斬る』なんて言っていたこいつは、よほど闇に堕ちていたことになるが……まあ、それは置いといて。

「まさかこのキノコが世界の危機……ってわけは、ないよな?」

 だとしたらあまりにも、あっけなさすぎる。こんなのと戦って勝つために、俺は今まであれやこれやと苦労してきたってことなのか?

 邪悪な芽を早く摘みすぎてしまった……なんてことは、まさかないよな?

 いや、早く摘むにこしたことはないんだろうけどさ。

 これで全部が終わりだなんてことになったら、あまりにも拍子抜けだ。

 そんなわがままな心配をしている時だった。

 傘の部分を失ったキノコの胴から、なんと新しい傘が生え、再びむくりと起き上がった。

そしてどこから現れたのか、次々とキノコが発生し、俺にその傘を向けて威嚇してくる。

 その数、さっきの倍以上。

 進化、あるいは別の種だろうか。てっぺんに空いている穴には、新たにピラニアのそれを思わせる鋭い歯がついていた。噛まれたら、耳や指なら簡単に持っていかれそうだ。

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