(5)


「待ってろ、今助けてやる!」

 俺は慌てて駆け寄った。キノコを次々とむしり取って、ガドを助けた。

「す、すみませんです。どうやらこの姿では、本来の力が出しきれないようです」

 気づくと、いつの間にか十数本のキノコに囲まれていた。最初より増えている。

「どうすりゃいい?」

「元の姿に戻るので、ボクを使い、こやつらを葬るのです!」

 ガドが光の消えた手を差し出す。

「ああ、わかった!」

 俺はその手を握った。

 キィィンッ!

 次の瞬間、超音波のような音とともに強烈な光が弾け、思わず目を細める。

 光が弱まって視界がはっきりすると、人型のガドは消えていた。

 代わりに、俺の手には鞘に包まれた片手剣が。

 そうだ。忘れかけてたが、これこそが本当のガドッシュだ! 

『抜くのです! 勇者様!』

「ああ!」

 念話に力強く応え、俺はガドッシュを鞘から抜く。まばゆい青の粒子が躍るように輝く。

 何度見ても惚れぼれする美しさだと感嘆の吐息をついていると、キノコの群れが一斉に襲ってきた。四方八方から迫る首。剣術初心者にこの状況はきつい。

「ど、どどど、どうすりゃいいんだ!?」

 焦ってガドッシュに尋ねる。

「振るうのです!」

 念話でないガドッシュの声。

 アドバイスが雑!

 だがその通りだ。敵を斬るつもりで振るしかない。

「ちくしょう、やってやらぁあああ!」

 とっさに俺は、子供のころにひなたとやっていた『剣士ごっこ』を思い出し、その要領でガドッシュを横凪ぎに振り抜いた。太刀筋が青の残像を作る。

 キシャァァァッ!

 キノコが金切り声を上げる。

 その瞬間、数本の傘がズパパパッと弾け飛んだ。

「や、やった! 斬れたぞ!」

「勇者様、後ろです!」

 喜びも束の間、振り返ると、数えきれないほどのキノコが迫ってきた。さっきよりもさらに増えてる気がする。どう見ても一人で相手するのは無茶な数だ。

「今です、『回転斬り』です!」

 ここだ、とばかりにガドが吠える。

「やったことねえけど!?」

「信じるのです。ボクと、勇者様自身の力を!」

 肉迫する敵、敵、敵。

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