(3)
落下。落下。落下!!
安全に下りるつもりだったのだが、これは想定外だった。
「わあああ! やめ、やめ、やめてええええ!」
俺は直立姿勢のまま、重力に従ってどんどん落ちていく。
赤土色の大地が迫る。
残り三十メートル、二十、十──!
頼む、助けてくれええ!
ぶつかる、と思った次の瞬間。足の裏に、もっふん、という空気のクッションを踏んだような感触があり、俺は『気をつけ』でホバリングした状態で、大地に立った。
究極の『チンさむ』を体感してしまったが、無事、着地できたらしい。
魔法ってすげえ。
「ちょ、ちょっとちびった……」
しばらくその場で生きている喜びを味わいたかったが、そんな暇はないと気づく。
「キェェェイ!」
ガドが雄叫びを上げた。すでに崖下に到達していたガドは、俺の数十メートル先を走っている。両腕の肘から先が鮮やかな青光の刃になり、例の動くキノコに斬りかかろうとしていた。
一方キノコは、遠目で見るよりも太く長く、より不気味な様相をしていた。
赤土の地面から直接生えていて、丈は俺の身長より少し大きいくらいだろうか。ぱっと数えたところ全部で八本。傘のてっぺんにあたる部分で俺のマナを吸収しながら、胴(茎?)をうねらせている。その姿は芸を覚えたコブラのように見えた。
ガドはステップを踏み、一気に間合いを詰めると、その一本を光る右腕の刃で一文字に斬った。青の剣閃が残像を生み、キノコは真っ二つになった。その上半分は斬り飛び、ガドの背後にどさりと落ちた。
その瞬間、残りの七本のキノコの
ガドの雄叫び。くるりとターンしながら、今度は左腕。
キノコがもう一本、斜切りにされて動かなくなる。
「……もう少し、相手の出方を見るとかしながら攻撃した方がいいんじゃ?」
距離を置いてその光景を眺めつつ、そんな慎重な意見を呟いてみるものの。
「キェェェッ!」
ガドが活き活きと声を上げ、さらに三本を連続して斬り飛ばしたところで、俺はもう、うずうずしてたまらなくなった。
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