(22)


「低能種族どもからも、同様に流れていたです。おそらく、昨日からそうだったのです」

「は? そういうことは早く言えよ! っていうか、昨日言えよ!」

「昨日は今よりもずっと微弱な力だったので」

 どうやら不穏な何かをうすうす感じていたらしいが、手がかりを掴めなかったらしい。

「つーかお前、マナのこととか知ってたんだな」

 てっきり、この世界のことを何も知らないと思っていたのだが。

「世界の事情や、珍妙な機械のことはともかく、マナと魔法と生物の関係性は、大抵どの世界でも同じだと聞いていたですから」

 ガドは一般常識を語るように言った。そういえばこいつ、女神様からも『知識が豊富』だなんて言われてたな。あんまりそういう印象ないけど。

「で、なんで俺だけ無事なの?」

「勇者様なのですから、当然です。体内に保有しているマナの量が、そこいらの凡族とは桁違いなのです。昨日勇者様と一緒にいた連中は、そのおかげでなんとかここまで持ちこたえられたようです」

 なるほど、アギーが話していたやつか。俺の生体マナが、夕の部の先輩たちに作用したということなのだろう。いま医務室で休んでる先輩も、みんな朝と昼の部の人たちだったから、その効果は馬鹿にできないようだ。

「でも、マナって普段から勝手に外に出ていくものなのか?」

 尋ねると、ガドは首を振り、ある一方向を睨んだ。

「問題は、そこです」

 また勝手に駆け出す。

「あ、おい!」

 俺はガドを追いかけようとして、親方たちの方を振り返った。

 どうしよう、置いて行っていいものか……。

「勇者様、こっちです! 何かいるです!」

 ガドが俺を呼んだ。ただごとでない感じだった。

 『何か』って、だから何なんだよ?

 気になるが、親方たちをこのままにしていくのもまずい。 

 いや、待てよ。そういえばアギーが言っていたが、マナが尽きても命に別状はないんじゃなかったか? 

 親方や先輩たちの様子を見ると、気を失っているだけで、息はあるようだった。

 大丈夫、かな。

「すみません、ちょっとだけ行ってくるっす。すぐ戻りますから」

 罪悪感を覚えつつ、反応のない親方にそう言い残し、俺はガドを追った。

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