(21)

 外に出て、眩しさに目を細める。

 そして日光に慣れてきた目に飛び込んできた圧倒的なその景色に、思わず声を漏らした。

「すっげえ……なんか、すっげえ!」

 そこはまるでグランドキャニオンを思わせるでかい峡谷のような場所だった。赤っぽく、荒い砂礫の大地。層状の模様をした巨大な岩々があちこちにそびえ立ち、ところどころに緑色の草地があったり、細い木が生えている。振り返ると、俺たちがいた魔鉱山は、他のどれよりも赤々とした大きな岩山だった。出入口は岩肌にぽっかり空いたトンネルのように見え、その穴の周辺には細かい藻のような草が生えている。

「……すげえだろ? ここはアイザ峡谷って呼ばれてる谷の谷底なんだ。でっけえ谷なら俺の故郷にもあるが……ここの景色は一味違うんだよな」

「親方の故郷って?」

「……『リオス』だ。土の国。……もう、何年も帰ってねえがな」

「へえ、土の国っすか」

 そんな会話をしている時だった。

 ドサッという音がして、振り向くと先輩が一人倒れていた。

「ちょっ……」

「おい、しっかりしろ。お前ら、早くこいつを医務室に……」

 親方が駆け寄り、他の先輩たちに指示を出そうとする。

 だがその瞬間、その先輩たちも一人、また一人と、糸が切れたように崩れ落ちた。

「親方、これってもう、仕事どころじゃ」

 すると、ついに親方が、がくりと膝をついてしまった。

「悪い……小僧。すまねえが……後は頼んだぜ……」

 それだけ言い残し、うつ伏せに倒れる。

 見れば、先輩たちはもう誰一人として立っていなかった。

「やべえ。やべえよ」

 マジでどうすんだ、これ? こういう時のために救急マニュアルとか読んどけばよかった!

「どうしようどうしよう! とにかくみんなを医務室に──」

「勇者様!」

 あたふたしていると、ガドの声が飛んできた。

「おそらくその低能種族どもは、体内のマナを失って動けなくなったのです」

「マナを失ったって?」

「よく見るです」

 ガドが俺の左手を掴んで持ち上げる。

 手首に装着したマギパッドが、すぐ目の前に突きつけられた。

「!」

 目を凝らしてみると、その表面はうっすらと緑色の光に覆われていた。

 マナだ。それが細い糸のように、どこかへ流れて行っている。

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