(20)
採石場に入って作業をし、三十分ほど経過しただろうか。
突然、ガドがツルハシの手を止めた。
「感じるです……」
そして胸に手を当てて告げる。
「なんだって?」
俺は聞き返した。
「昨日からわずかに感じてたですけど──今、確信したです」
「だから何を?」
再度尋ねるも、ガドはすでにその何かに気を取られ、きょろきょろしている。宝石のような赤い両目が、うす暗い空間でぼんやりと輝きを帯びていた。
「わかりました。外です、勇者様!」
そしていきなり駆け出した。
「お、おい! 待てよ!」
声をかけるも、ガドは聞く耳を持たずに行ってしまった。
「小僧、どうした? 相方は?」
追いかけようとするも、ちょうど親方に呼び止められた。
「す、すみません! なんか、どうしても外に行きたくなったみたいで」
「なんだ、辛抱のねえ奴だな……だが」
親方は昨日より多くの汗をかいているように見えた。大きく息を吐きつつ、その汗をぐいっとぬぐう。そして現場にいる全員に向け、声を張り上げた。
「てめえら! 今日はいつになくしんどそうだから、早いが特別に休憩にするぜ! もしオレらと一緒に外に行きたい奴がいたら、ついてこい!」
「うーっす!」
各々、疲れた顔をしていたが、しかし嬉しそうに返事をした。
俺と親方が外に向かうと、半数以上の先輩たちがぞろぞろとついてきた。魔鉱山の外に出るためのドアは、親方を含め、ごく限られた権限のある職員しか開けることができないらしい。そのため多くの先輩たちも普段あまりその風景を見ることができないので、こういう機会を逃さず便乗するのだとか。
残りの先輩たちは、ごく狭い医務室のベッドで休憩している。医務室は魔法により重力が軽く設定されており、刑務作業の際は、監督する刑務官がそこに待機していた。一度入ってしまうと出たくなくなってしまうコタツのような部屋なので、先輩たちはみんな毛嫌いしているのだが……。よほど疲弊しているのだろう。
「遅いです! 何をしているのですか!?」
ドアの前に到着すると、目を光らせたガドがイライラした様子で怒鳴った。
そのガドを俺がなだめている間に親方がドアに触れる。するとその分厚いスライドドアが、ずるずると開いた。
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