(19)


 さくっと準備をして、俺はガドと一緒にタワーへ向かった。

 現地に集合してみれば、作業員の人数は、昨日の半分程度だった。

「規定人数に足りない班は宇宙に行けないってのは、法律で決まってるらしくてな。そうすると、その時間帯はまるっきり仕事を落としちまったことになるし、もちろん一グラムもマセキは採れてないよな。そういうことが続くと、他の業者に仕事の枠を取られちまうんだとさ」

 俺や親方の雇い主である本社は、そういうことを気にしているらしい。ゴンドラに乗っている間に親方が話してくれた。

「ま、オレは明日休みだし。これさえ終わればいつもより長くゆっくりできる。午後から家族で出かける約束もしたしな。朝からの仕事も、たまにはいいだろう」

 この仕事はシフト制なので、親方の休みは一般的な休日とは異なるようだ。

「約束といえば、今日こそ魔鉱山の外を見せてやるから、楽しみにしてろよ」

「本当にいいんすか? 疲れてるんじゃ?」

「どうってことねえさ。言ったろ、他の連中には見せてやってんだ。お前にだけ見せないってんじゃ不公平だし、それに、その間はマセキを掘らなくて済むしな」

 どうやら業務時間中に案内するつもりらしい。

 親方は牙を剥いてニカッと笑って見せたが、ほどなくして小さく溜息をついた。やはり疲れている様子だった。

 他の先輩たちもあまり精気がないように感じる。朝からうつらうつらと舟をこいでいる者もいれば、まだ現場に立っていないうちから汗を浮かべている者もいた。

「まさかノロとかインフルとか、そういうんじゃないよな……?」

「ノロ? 何のことだ?」

「あ、いや……感染病とかだったらどうしようと思って」

 独り言のつもりだったが、親方に聞かれていたらしい。

「どうだろうな。医者に診てもらった奴もいるが、病気は特に見つかってないってよ」

「そうっすか……」

 だが状況はかなり異常らしい。朝の部だけでなく、昼の部のメンバーもちらほらダウンしているらしく、みんな症状は一緒。とにかく重度の疲労という感じで体に力が入らず、ろくに動けないそうだ。 

 一方で夕の部の先輩たちは、疲れ気味ではあっても動けないという人はいない。人数が多いから、作業量が少なくて済んでいるということだろうか。 

 いや、そんなことはないだろう。みんな同じ場所で、同じ仕事をしているだけだ。

 いったい、何が起きているんだろうな?

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