(16)


 で、その異世界での次の休日。

 俺は夕方から、惑星ハトラの採石場で汗水たらしてツルハシを振っていた。

「しつこいようだけど、何があってもおとなしく仕事してくれよ? な?」

 隣にはガドがいて、一緒に並んで岩を削っている。

「……」

 むっつりした顔で作業をしている。

「おい、聞いてるのか?」

 返事がないので尋ねると、ガドはそれまで以上に力を込めて、がつんと岩を叩いた。

「なんでボクがこんなナマクラを使わなきゃいけないんですか!」

 岩はそれほど削れていない。ガドは重力負荷の影響をほとんど受けていない様子だったが、腕力はあまりないようだ。

 ナマクラとはツルハシのことを指しているらしい。

「声がでけえよ。というか怒ってもしょうがないだろ? お前が剣だってバレたら厄介なんだよ。わかるだろ?」

「ああ、じれったい!」

 ガドはもう一度、岩を叩いた。ツルハシの先がわずかに、ぐりんっ、と斜めにズレる。

 もちろんそれではうまく削れない。こいつは手で道具を使うという行為に、まだ慣れていないのだ。

「勇者様、ちょっとだけ! ちょっとだけ斬ったらダメですか!?」

「ダメだ。どうせちょっとで終わらないだろ」

「ちぃぃっ!」

 ガドは苛立ちを隠さず、舌打ちして岩を蹴った。さすが剣、痛みはないらしい。


 ガドが一緒に働くことは、意外にもあっさり認められた。親方いわく『こういう仕事はいろんな奴が入ってくるからな。驚くことはねえ』そうだ。俺たちに給料を支払っている本社も、働き手が増える分には何の問題もないらしい。

 ガドのことは弟分みたいな感じで紹介した。見た目は人間だし実の兄弟だと主張してよかったかもしれないが、それにしては顔の出来が違いすぎる。

 マギパッドを持っていないことも、さほど問題にならなかった。

 ごく少数ではあるが、この世界にもそういう者がいるそうだ。故障だったり、金銭的な理由だったり、生活魔法が嫌いだったり。理由はいろいろだ。現実世界でPCやスマホを持っていないくらい不便だが、それでも生活する方法はあるようだった。

 仕事の日当は、俺のマギパッドに一括して支払われることになった。その先の使い方に関しては俺とガドの問題なので、本社はノータッチだそうだ。

 ただしガドが働く場合には、必ず俺が同行しなければならないことになった。何かトラブルが発生した時の責任は、俺にも降りかかってくるのだ。

「おう、どうした新入り? あんまりはかどってねえようだが?」

 親方が汗をぬぐいながら声をかけてきた。

「あんまり成果が出ないようだと、次の仕事はねえぞ?」

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