(14)

「さっきから質問ばっかりね。……加護っていうのは、昔から伝わるおとぎ話みたいなものよ。四大国には太古から四精霊が住んでいて、その地で生まれた者は、その精霊の魔法属性を与えられると言われていたのよ。私とピロロは風の国ドニウが故郷だから、風の加護で風属性ってわけ」

 おお、なるほど。

「今日の説明はわかりやすいな。つまり火の国生まれなら火属性とか、そういうことか」

「ほんと!?」

 するとアギーは声音をはずませた。『わかりやすい』という単語に反応したのだろうか。

「そうなの! でも現代では、単純に種族の遺伝によって属性が決まってるっていう結論に至ったんだけど、私は加護っていう方がしっくりくるのね! それはたぶん、おじい様がそういう話をよくしてくれたからで──」

 興奮した様子でそこまで言って、彼女はふいに喋るのをやめた。我に返ったという感じで真顔を作り、そっぽを向いた。

「あー。……ほんと、嫌いだわ」

 心なしか尖った耳の先が赤くなっているように見えるが、気のせいだろうか。意外な一面もあるようだ。

「は、話を戻すと、例えばあなたなら水の加護ってことね。だから『レタ』に行ってみたり、同じ加護の種族と一緒にいれば、治るかもしれないわよ? その危ない洗脳も」

「はあ、ソウデスカ……」

 結局、お馴染みの辛辣な言葉を受けたところでマギパッドのアラームが鳴り、お互いに教室へ向かうことになった。

「……なんだかんだと言いつつ、いつも真面目に話を聞いてくれるんだよな」

 近ごろアギーのことを、やはり良い子なんだろうなあと思うようになってきた。仮にそれが家柄のせいだったとしても、実際に学園で話をしてくれるのはアギーしかいない。

 あ、ピロロもだけど。それは例外として。

「風の国ドニウに水の国レタ、か」

 いったいどんなところなんだろう?

 それから俺は休み時間などを使い、それぞれの国のことを調べるようになった。現地に行くことを想定して調べる際、特にあることを重点に置いた。

 もちろん、費用面だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る