(7)
ギルドのお姉さんが手続きして連絡を取ってくれた結果、なんとその日のうちに職場へ赴くことになった。面接や書類選考なんかは一切なく、とりあえず実際に働いてみろという感じで、いわば職場体験をすることになった。
ちゃんと日当も支払われるらしい。
ギルドを出たのは大体午後の三時頃。どきどきしながら指定の場所に向かい、仕事の先輩たちと合流した。仕事は工場みたいに三交代制で、朝、昼、夕の部に分かれている。俺はその夕の部に参加するわけだ。
そういえば今日は、行き倒れたせいで学園に行っていない。現実世界だったら、学校を休んで働きに出るとはどういう了見なのだと怒られそうだが……あの学園なら大丈夫。もちろんその分、勉強しなきゃならないだろうけどな。
それより今は、食事代を稼ぐ方が優先だ。
お姉さんの話によれば、土木作業のような力仕事らしいのだが、それでどんな危険が待ち受けているんだろう。ぶっちゃけ怖いが、少しだけ楽しみでもある。
俺は仕事の集合場所に、指定時間ぎりぎりで到着した。例のごとく、走って来たからだ。
集合場所は、『サーム宇宙エレベートタワー(通称、サームタワー)』という建造物のふもとにある、『
「規格外のでかさだとは思ってたけど、まさか宇宙に続いてるとはな……」
なんとその『サームタワー』というのは、俺が異世界に転移した初日に見た、巨大な塔のことだった。
魔王城? タワー系ダンジョン? 全然見当はずれなんですけど。
見当はずれではあったが、その巨大さと技術には圧倒された。
「っていうか何? 俺、この世界で宇宙に行っちゃうの? すごくね?」
腰が折れるんじゃないかというくらいに仰け反って、ようやくその鉛色の先が空の向こうに続いているのを確認できる。この塔からすれば、俺の体なんて米粒以下だ。いや、空気中の粒子以下か。
大樹の根のようだと感じた三つの支柱も、予想通りにでかかった。『太い』とかじゃなく、『でかい』だ。
『
「おーい新入り、早く行くぞー」
仕事の先輩たちに呼ばれた。
そうだった。いつまでも圧倒されている場合じゃない。
仕事だ、仕事。
建物の中は、駅と物流センターが混ざったような雰囲気だった。コンテナを積んだ台車を転がす人があちこち歩き回っているかと思えば、その人が台車ごと宙を飛んで上階にそれを運んだり、観光客らしき人たちがわいわいはしゃぎながら、内部の様子を撮影したりと、にぎやかだった。
俺は先輩たちと一緒に、ステーションの奥へ入っていく。
『エレベーター利用者受付案内所』という標識がある方向へ進む。どうやら塔の中心に向かっているらしい。支柱入口からそこへ向かうだけでも、さすがに結構な距離があった。
案内所の先には改札口を思わせるゲートがあった。監視用の魔法陣と複数の警備員により厳重に警備されていて、一般人は中に入れないようだ。俺たちのように仕事で用があるか、宇宙旅行チケットを購入した者でなければ、そこを通過することはできないらしい。
指示されるがままに身体検査などを終え、最終的に俺は、先輩たちと一緒にでかいゴンドラのようなものに乗っていた。
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