(2)


「では、これから事情聴取を始めるぞ。すでにこの会話は魔法『ハイレコード』で記録されているから、無駄話は不要だ。正直に、簡潔に、経緯を話せ。虚偽はきみのためにならないから、注意しろよ」

 コリンさんが告げると、俺の目の前に『警告文』と表記されたパネルが出現した。俺が持っている権利だとかの項目がいろいろと記されている。これを予め提示するのも規則の一つらしい。

「正直に、ですね。わかりました」

 俺はそのパネルの『承認』ボタンに触れ、行き倒れた経緯について話した。


 ──一文無しになった翌日、俺の0G生活がスタートした。基本使用料無料のマップ魔法を頼りに走って登校し、食事はガドが切ったトマトもどきだけで昼まで耐えた。

 偶然にも、ちょうど現実世界に戻る日だったのだ。その時は空腹を感じていたものの、わりと余裕があった。

 そのせいで選択を誤った。

 現実世界でたっぷり食っておけば、異世界に転移した後も、七十二時間くらい耐えられるんじゃないかと考えたのだ。寺とかでやる断食修行は三日間が基本だって聞いたことがあるし、俺にもできそうだと思った。

 結果はこの通り。根性でなんとか耐え続け、ひぃひぃ言いながら三日間を過ごしたのだが、その翌日の登校途中に意識が遠のいたのだった。

 ──。


「説明はそれでいいのか?」

 コリンさんが尋ねた。

「他に説明のしようがないんで。正直に話したんですけど……駄目ですか?」

「まさか。きみがそれでいいのなら、私は構わん。しかし誰も信じないというのに、強情な奴だな、きみは」

「本当のことなんで……」

 警察関係者の間では、俺の事情は周知のことらしい。

「そう主張するのはきみの自由だ。我々にとっては不快だがな」

 ……とはいえハナっから妄言扱いだけどな。

「とりあえず事情聴取はこれで終わる。ハイレコードも解除しよう」

 コリンさんはマギパッド・モデルBの銃身についているセンサーに触れた。淡い緑色の光と共に、端末がふっと消え去る。

「そもそもの話だが、きみは馬鹿か? きみのアパートからここまで、何キロあると思っているんだ。我々の訓練でも走らない距離だぞ。しかも何も食べずにだなんて」

「だって、お金ないですし……」

 俺が言うと、コリンさんは呆れたように肩をすくめた。

「その件だがな。理由はともかく、生活費がないのなら働けばいいだろう」

「そう言われても……」

「まったく。ギルドに行けば、きみにもできる仕事がいくらでもあるだろうに」

 …………。

「えっ?」

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