(25)
「あの裁判における裁判費用を、ご請求に上がった次第なのです」
「……へ?」
思わぬ台詞に、一瞬だけ思考が止まった。
ベ、ベンゴリョウ?
「本来であればこうして直接お伺いするという非効率的なことはしないのですが。あなたの場合、少々常識に疎いようですので、念のために」
普通であれば、マギパッドを通じて請求し、支払いするというのが常識らしい。多少ドライな感じはするが、マギストアで何かを購入するのと同じ感覚だろう。
「えっと……それで、おいくらなんでしょうか?」
恐るおそる尋ねてみた。
「六十万Gです」
弁護士は平然と答えた。
ろっ…………!
「六十万!? 俺が財団からもらう援助金の総額じゃないっすか!」
「おや、それは偶然ですねぇ」
偶然の一言で片づけられては困る。それを支払ったら、俺はこれからどうやって生活していけばいいんだよ?
「ちょっと待ってくださいよ! 急にそんなこと言われても困りますって!」
「こちらとしては、急でもなんでもないのですが。あなたは裁判に何のお金もかからないと思っていたのですか? 敗訴したとはいえ、依頼されて弁護を請け負った以上、こちらが報酬を受け取るのは当然のことですし、他にも裁判には諸々の経費がかかるのです」
弁護士は冷静に説明をしはじめる。
当初、裁判に俺が敗れた時は請求を半ば諦めていたらしい。俺は身元も不明だし、マギパッドも持っておらず無一文だったからだ。そういった免除制度もネウトラでは定められており、俺もそうなる予定だった。
「しかし、更生プログラムで出所できたとなれば話は別です。あなたはレニ財団から資金を受け取っており、支払い能力があると判断されます。もちろん、全額を一度に支払えとは言いません。わが弁護士事務所では特別に、分割払いを認めています」
「分割って、何回払いですか?」
「最大で六回まで。つまり今回なら、月に十万Gずつお支払いいただくことになります」
「いやいやいやいや、そりゃないですって!」
「しかしあなたは支払いにおける信用が充分ではありませんので、それが限界です」
財団からの援助金は総額六十万Gだ。毎月十万ずつ受け取ることができ、援助の期間は半年と定められている。
それがそっくりそのまま弁護料の支払いに回されるなんて、鬼畜すぎる。
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