(24)


「え? つまり脱がせろってことかよ!?」

 やばいって。それはやばい。本人は男でも女でもないと主張しているが、ガドはぱっと見、女の子だ。しかも児童。

「勇者様、鞘は『脱ぐ』とは言わないです。『抜く』と言うのですよ」

「んなことどうだっていいわっ」

「よくないです。それより早く洗いたいです。中まで赤いのが入ってきてますし、濡れたままでは錆びの原因になるのです」

 ガドはコートの胸元を引っ張って覗きながら、俺を急かす。

 絶対に自分で脱げるだろそれ、と思いつつ、仕方がないので決意する。

 剣を抜かない勇者なんていないからな。


 ……で、どぎまぎしつつやり遂げた。びびりすぎて、コートの中身がどうなっているかは確認できなかった。なんか、すまん!(誰に)

 ガドは裸を見られることに抵抗はないようだったが、はにかむように笑って、

「少し変な感じがするですね。グリップを握られずに、こんなふうに優しく抜剣されるというのは」

 などと言うのだ。意識するなという方が無理。思わず目を逸らしてしまった。

 ていうかお前のグリップって、どこだよ!?

 そんなツッコミも入れらなかった自分が情けない。

 するとその時、玄関からごつごつとノックの音が聞こえた。昔の名残なのか、このアパートにはチャイムがなく、ライオン顔のノッカーが設置されているだけなのだ。

 誰だ?

 シャワー中のガドに「しばらく出てくるなよ」と声をかけ、俺は玄関に向かった。客が誰だとしても、ガドが裸で登場するのは、なんかやばそうだ。

「どちら様ですか?」

 恐るおそる扉の向こうに尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「あのう……私、以前裁判の際に弁護を務めた者ですが」

 弁護士だ。

「ど、どうも。その節は……」

 今さら何の用だろうと思いつつ、俺は扉を開け、ぎこちなくあいさつした。こういう時って、どう対応すればいいのかよくわからない。

 弁護士はすらりと背が高く、オリーブ色の肌に鷲鼻わしばな。お洒落な雰囲気のハット型の帽子を被り、身に着けているボディスーツは黒く、薄いストライプが入っていて、肩に飾りが付いている。

「警察からあなたが出所したと聞いたので伺いました。おめでとうございます。いやはや、まるであなたを祝福するかのような天気でしたねぇ」

 彼は帽子を取ってスキンヘッドの頭を晒し、紳士的に会釈をした。

 いつの間にか雨は弱まったようで、雷の音も聞こえなくなっている。

「裁判では力及ばず、私も申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが……良かった、本当に良かった」

「そうっすね、はは……」

 本当にそう思っているのか疑わしいが、弁護してもらった手前、邪険にもできず、とりあえず扉を閉めさせる。ガドがシャワーを浴びているため長居はさせたくないが、玄関先で少し立ち話するくらいなら構わないだろう。

「それで、本日お伺いしたワケなんですがね……」

 弁護士は咳払いをした。

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