(17)


「疑わしきは罰せよ、です。そやつらが皆、敵の縁者とも限らないですから」

 ふと見ると、ガドッシュの瞳は危ない感じでギラついていた。

 えっと、ガドッシュさん?

「いやいや、それはないと思うけど。少なくともアッシュさんは良い人だぞ」

「言い切れないです。裏では何をしているかわからないものですよ。正義を阻害し、勇者様から力を奪おうという魂胆を持つ者が必ずいるのです。だから全員、斬るのです」

 ガドッシュは指先をぴんと伸ばし、手刀を掲げる。

 これ、何かやばい感じじゃないか?

「いや、やめろって。そんなことしたら、また警察に捕まっちまうから!」

「何を言うのですか。そやつらも斬るのですよ」

 ガドッシュは外へ出ようとする。

 こいつ、本気だ。

 そう感じ、俺はその腕を掴んだ。

「ちょっと待て。それじゃ勇者どころかテロリストだぞ。ていうかお前、どうしたんだよ? そんなキャラじゃなかっただろ!?」

 出会った頃のガドッシュはもっと清らかで、純粋な感じだったはずだ。

「勇者様にボクの気持ちがわかるのですか!?」

 するとガドッシュは声を荒げた。そして腕を掴んでいる俺にも伝わるくらい、わなわなと震え始めた。

「……永遠に続くかと思われる暗闇の中、勇者様のお迎えを待ち続ける日々でした。頭がおかしくなるかと思ったくらいです。勇者様と共に魔を滅ぼし、世界を救うのだという意志だけが、ボクを支えていたと思うのです」

 保管庫の中は相当にしんどかったようだ。鞘に納まり、何もできずに閉じ込められ、いつまでたっても迎えは来ない。

 しかもそこには呪われたマジックアイテムも保管されていたらしい。そいつからネガティブな内容の言葉を延々と投げかけられ、必死に抗いながらも、ガドッシュの心は徐々に蝕まれていったようだ。

 いつしかその心中では、毎分、毎秒、俺に見捨てられたのではないか、という葛藤が巻き起こるようになったそうだ。

「この姿になってまず最初に、その低能なマジックアイテムを一ミリ単位で小間切れにしてやったです」

 ガドッシュは見た者をぞっとさせるような笑みを浮かべ、

「だけどあんなゴミクズを斬ってもダメですね。やはり何か足りないのです。……そう、血です。したたる血。飛び散る血。血、血、血ぃぃぃっ!」

 突然、狂ったように喚き出した。

「おいガド! 目を覚ませ! それじゃまるでお前、聖剣じゃなくて魔剣だぞ!」

 慌ててたしなめると、

「違うぅっ! 魔剣なんかじゃないい!」

 ガドッシュは頭を抱えてしゃがみ込んだ。

 どうやら俺の言葉が効いているようだ。

「いや、今のお前はなんか魔剣っぽいぞガド! それでいいのか!?」

 なんか呼び方も『ガド』の方がしっくりくるなぁと思いつつ、俺は追い打ちをかけた。

「ボクは聖剣なんだああっ」

 ガドは泣き叫ぶように訴え、床をばんばんと叩いた。

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