(16)
「それより、抜け出してきて大丈夫だったか? 警察に追われてないのか?」
もし保管庫から押収品が消えていたら問題になりそうだが。
「あっちにはボクのレプリカを代わりに置いてきたです。抜かりはないです」
「そ、そんなこともできるのかよ?」
「擬態と共に発見した、新しい能力です」
ガドッシュは自分という存在のごくわずかな一部を使い、本物と瓜二つの剣を生み出したそうだ。
最初からそんな能力の存在を知っていれば、こんな状況にはなっていなかったかもしれないのに。……まあ、いまさら悔やんでも遅いが。
「警察署とやらを出てすぐ、勇者様の残り香を感じ、それを辿ってきたらこの部屋を見つけたのです」
犬みたいなやつだな。
不幸中の幸いで、ガドッシュはすぐそばの『ムエロ第一警察署』に保管されていたらしい。そうでなければおそらく俺を見つけられず、あてもなくノラ剣としてさまよっていたという。
部屋は留守ではあったが、ガドは寝ぶくろから俺の匂いを感じ、帰ってくると信じて待っていたのだ。
「で、ついつい眠ってしまった、と」
「はい。この体を維持するのは結構な神力を消費するので」
ガドッシュが持つエネルギーは、マナなどでなく、神々から与えられた神力の一部なのだとか。消費したとしても、睡眠を取ることで自己回復ができるらしい。
「剣の姿には戻れるのか?」
「はい。ですけど、元の姿に戻り、またこの世界の法に触れたら厄介ではないですか? しばらくはこの姿のままでいた方がいいと思うのです」
「ああ、なるほど。その格好なら、銃剣法には引っかかりそうにないもんな」
ただこんな美少女とこれから同居するのだと思うと、ドギマギして日常生活に支障をきたすおそれはある。
まあ、なんとか慣れるしかないだろうが。
「それにしても、まさかお前が女だったなんてな……」
俺が言うと、ガドッシュは呆れた感じで首を振った。
「何を言うのですか。剣に男も女もないです。強いて言うなら、男であり女でもあるのです」
「・・・・・・そ、そうか」
まるで悟ったニューハーフのような台詞だな。
「そんなことより、勇者様こそご無事でよかったです。ボクがいない間に何かあったらどうしようかと、心配していたのです……」
目を潤ませて言うガドッシュに、申し訳ない気持ちになる。
「ごめんな、迎えに行けなくて。あれからいろいろあってさ……」
俺は自分の身に起きたこれまでのことや、この世界のことなどを伝えた。
「なるほど。そういうことがあったのですか。……ええと、警察官に刑務官、学園理事長、学長、エルフ族にピクシー族ですね」
ガドッシュはうんうんと頷きつつ、登場人物を指折り数えていたかと思うと、
「では、これからその関わった者を全員────斬りに行くのです」
いきなりとんでもないことを言い出した。
「は?」
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