(7)
大変だ。
異世界学園生活初日にして、クラスメイトたちが俺を避けるようになった。
あちこちから声が聞こえてくる。
「あのアギーがあんなに怒ることって、今まであった?」
「ないわね。マジでやばいんじゃない? あの転入生」
「家に転移したとか、どういうこと?」
「ガチなストーカーなのかしら」
クラスでのアギーの人望は厚いようだった。そのせいで彼らの中では、はじめから俺に非があるのは確定している感じだった。
そんな雰囲気のところに、こちらから無理やり話しかけて打ち解けようなんて無茶は、俺にはできなかった。
幸い、マギパッドにインストールしていた時間割表に各授業の教室が記載されていたので、学内マップと照合すれば、誰かの助けがなくとも授業は受けられる。
だが異世界に来てまで独りとは……。
さすがに授業内容も頭に入らない。そもそもいきなり異世界の授業について行けというのが無理な話ではあるが、周囲の視線やぴりついた空気に圧迫され、少しも集中できない。
肝心のアギー嬢は、誰よりも露骨に俺を避けている。その銀髪がちらりと見えたかと思えば、すぐに他の生徒の影に隠れてしまう。
二度と話しかけるなと言われてしまっては、どうしようもない。
もはや誤解を解くことは諦めるしかないのだろうか……。
昼休み。気疲れでぐったりしていた俺は、居場所を求めて逃げるように、校舎の外へ自然と足が向いた。
前庭に行こうとして、中等部と小等部のロビーを通過する。その際、にぎわうロビー内で、白地に水色の小等部の制服を着た男の子が、女の子を泣かせている現場を目撃した。
ケンカか?
止めるべきなのかと迷ったが、先に他の子どもが仲介に入った。
俺はなんとなく立ち止まり、その光景をぼんやりと見ていた。なんだかよくわからないうちにその子どもたちは和解した様子で、仲介役も含めみんなで遊び始めた。
俺は再び歩き出した。
「……子どもは簡単でいいよな」
ケンカしても、生まれた種族が違っても、一緒に遊べて、すぐ仲直りできるのだ。
「俺だって、昔は独りじゃなかったさ……」
歩きながら、ついこの前に現実世界へ戻った時のことを思い出す。三日前の話だ。
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