(6)
うそだろ、と思ったのは俺も一緒だった。
その生徒は、俺を刑務所送りにした、あのエルフ族の銀髪美少女だったのだ。
「あら、顔見知りだったんでしゅか? あの子がアギーでしゅよ」
「ええ! あの子がでしゅか!?」
思わず先生の口調がうつってしまうほどに、俺は驚いた。
なんだなんだとざわつく教室内。
やばい、銀髪美少女がめっちゃ睨んでいる。
そうか。あの子はまだ、俺のことを不法侵入した危険人物と誤解したままなのだ。
あれ? でもあの子ってアッシュさんの孫なんだよな? だけどあの様子からすると、俺が出所して学園に入学することになったのを知らなかったっぽいが……その辺、どうなってるんだ? わけわかんないぞ?
思わぬ事態に頭が混乱するも、
「では早く自己紹介を。授業が始まってしまいましゅよ」
という先生の発言で、今やるべきことを思い出す。
だがアギーは睨んでいる。
この状況で自己紹介なんて、どうすりゃいいんだ?
それより彼女の誤解を解く方が先決じゃないのか? ああ、でも──
くそ、悩んでるヒマはない!
「お、俺、和田剛志! いろいろあって、なんでかここに入学することになったんだ! 本当に、あの時のあれは完全に事故で──だからマジで俺、怪しい奴じゃないんだ! 何も知らずにこの世界に来て、たまたま君の家のベランダに転移しただけなんだ! 信じてくれ、頼む!」
葛藤の末、俺はアギーひとりに向かって、猛烈な自己紹介と弁解をしていた。
真剣に伝えた。
クラスメイトたちはさらにざわつき、今度はその顔の数々がアギーに向けられた。
彼女が口を開いた。
「嫌よ、この変態、ストーカー! 二度と話しかけないで!」
室内がしん……と静まった。
アギーはぷいっと身をひるがえし、教室を出て行ってしまった。俺は呆然と、彼女が消えた後のドアを見つめた。精神的ショックで動けなかった。
現実世界においても、女子からここまで拒絶された経験はない。
俺、立ち直れないかも……。
「ま、まあ、生徒たちのことに、教員はとやかく言う必要はないでしゅよね。では、わたくしは授業に行ってきましゅので、ツヨシ君、頑張ってくだしゃい!」
先生はそう言い、逃げるように退室した。
逃げ出したいのは俺も同じだ。
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