(23)
「うん、ネウトラで剣のような危険物を所有するには、銃剣所有者登録というものが必要だ。そうすれば所有が可能となり、取り決めた場所での保管が許される」
コリンさんは手首のマギパッドを操作し、空中に出現させた半透明のパネルを確認しながら話す。
「だが残念ながら、きみがその登録を行うことは不可能だ」
……。
……え?
淡々と言われたため、俺はその意味をすぐには理解できなかった。
「ちょっと、え、ウソ、つまりそれって……」
一気に襲ってくる焦燥感。体からさあっと血の気が引いていくのを感じる。
それって、ガドッシュを取り戻すのは無理ってこと?
「きみは現在服役中の身だ。その時点で、百万回申請したとしても、許可がおりることはない」
返す言葉が思い浮かばず、俺は呆然とした。
そう。更生プログラムは免罪符ではない。檻の外に出ることはできても、俺はあくまで犯罪を犯した囚人という扱いなのだ。
「身も蓋もないが、どうしても返してほしいなら、まずは刑期を終えることだ。きみの場合は我々と財団の監視下で学園に通い、卒業できたら就労するか進学し、そうして今の刑期が満了するのを待つんだ」
ちなみに俺の刑期は、当初の一年間から、繰り返した脱獄未遂により五年にまで延びている。
理事長との取り決めについては、それはそれ、だ。学園を卒業したからといって、刑期まで短縮されるわけではない。
「そもそもきみは現在無戸籍の扱いになっているから、通常よりもさらに時間がかかると思った方がいいな。下手をすれば十年……いや、あるいはもっとか」
コリンさんがさらに追い打ちをかける。
「じゅじゅじゅ、十年!?」
「大切なものなら、たとえ十年でも待てるだろう?」
十年待つって……二十六歳までってこと? 俺、そんなに待てるのか?
コリンさんの声が遠くなっていくのを感じる。
だが、くじけそうになる俺の脳裏に、ガドッシュと離ればなれになった時の情景がよみがえった。
──あの時、俺は警察に拘束されて身動きが取れず、冷たいタイルの床に転がり、ガドッシュが目の前で持ち去られていくのを見ていた。
「ガドッシュ、待ってろよ! 必ず、必ず迎えにいくからな!」
警察と話をつけ、俺はすぐにガドッシュを返却してもらう算段だった。
『はい、勇者様! 信じて待ってますからぁ────!』
俺が叫び、ガドッシュが念話で返すが、有効範囲から外れたのか、その声はすぐに途切れた。それでもこちらの声は聞こえるのではと、俺は何度も叫んだ。
必ず迎えに行くと。
……そうだ、約束したんだ。
諦めるな俺。
「待ちます。必要なら何年だろうと」
「うん、その意気だ。じゃあこれから、きみを仮住まいへ案内する。ついてきてくれ」
だが、もしも待っている間に、この世界に危機が迫ったらどうすればいいんだろうな?
そんな不安が持ち上がったものの、あまり考えないようにして、俺はコリンさんの後をついて歩く。
こうして何もかもが想定外な、俺の異世界生活がようやく進み出した。
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