(22)


 異例(らしい)な条件つきの更生プログラムにより晴れて出所することが決まり、なんともありがたいことに、翌朝には無限牢獄から解放された俺だったが。

「剣だけは返却できないって、どういうことっすか!?」

 俺は刑務所の出口である鉄門の前で、荷物を持ってきた刑務官に食ってかかっていた。

 収監時に預けた品々の返却の際、そこにもっとも大切なものが不足していた。そう、俺の相棒である聖剣ガドッシュが。

 で、尋ねてみれば「それだけは返却できない」と。

「現在、お前の剣は警察署の方で保管されているようだ。ここにないものはどうしようもないだろう」

 その刑務官は冷たい態度で言った。

「警察署って、どこの?」

「知らん、自分で探せ。こっちはまだまだ仕事があるんでな。そういう時間がかかる作業は勘弁してもらいたい」

 刑務官はうっとうしそうに手を振る。

「そ、そんな無責任な!」

 職務怠慢!

「無責任はお前だ。大切なものなら、必要な手続きを適切に行ったうえで、法的にきちんと所有しろ。自分の怠慢を他人のせいにするな」

「う……」

 そう言い返されると、ぐうの音も出ないが……。

 し、仕方ないだろ! 異世界に来た瞬間に取り上げられちまったんだから。

「じゃあ、適切な手続きって何すか? どうやってやればいいんすか?」

 言い訳したいのをこらえて尋ねると、

「知らん。自分で調べろ。あるいは、そちらに問い合わせるんだな」

「?」

 刑務官はそう答え、唐突に敬礼した。もちろん俺に対してでなく、俺の背後から歩いてきた警察官に対してだった。

「引き継ぎます。ご苦労様です」

 警察官も敬礼し、二人は『マギパッド』と呼ばれる手首に巻いた腕輪型の機械を通じて引継ぎの手続きをする。

 刑務官が立ち去ると、その警察官は俺に向き直った。

 女性の警察官だった。

「ワダツヨシ、だな。今日から、私が君の監視を担当することになった。よろしく」

 更生プログラムの対象者となった囚人を、財団と共に監督する『監視課』の職員らしい。

 名前はコリン・アゾティス。

 警察の制服である黒いボディスーツは、その巨大な胸と筋肉質な体型により、驚くほどむちむちしていた。俗っぽく一言で表すと、とてもエロい。

 彼女もまた額から二本の立派な角が生えていて、真っ赤な髪を二つ編みの一本おさげにして垂らしている。

 聞けば彼女のように額や頭頂部に角があるのは、鬼人族という種族らしい。どうやら警察関係に多く見られる種族のようだ。

 監視課の担当警官といっても、四六時中生活をともにして監視するとか、そういうわけではない、とコリンさんは言う。

 魔法による監視システムを用い、俺が何か怪しい行動をした時には彼女から連絡がきたり、直接駆けつけて来たりするのだとか。

 その時は、俺にとってムショバックの危機なのだろうが……なんとなく、駆けつけて来てもらいたいような気がしないでもない。

 自己紹介などしている最中も、その大きな胸に思わず目がいってしまうのだった。

 だがそれよりも。

「あの、ちょっと訊きたいんすけど」

「何だ?」

 コリンさんはきりっとした態度で応じる。

「押収された俺の剣を返してもらうには、どうしたらいいっすか?」

 俺は先ほど刑務官に言われたとおりコリンさんに相談した。

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