(18)


 嫌だ。刑務所に戻るのとか、絶対に嫌だよ!

 焦る俺をよそに、アッシュさんは言われ放題だった。まったく頭が上がらない様子だ。相手の見た目が少女なだけに、なんとも情けない絵面になっている。

 いやいやアッシュさん、なんとかしてくれよ!

「──で、坊主。お前さんはさっきから、何を黙って突っ立ってるんだい?」

 いきなりその矛先が俺に向いた。

「え?」

 突然の問いかけに言葉が詰まった。

 えっと、二人の話が終わるのを、待ってたんだけど……。

「この会話の流れでわかるだろ? お前さんはまたムショに戻されようとしてる。だのに、それでいいのかい?」

「い、いやいやいや、よくないっすよ。いいわけないじゃないですか」

 俺はとっさに首を横に振る。

「返事できるじゃないかい。喋れないのかと思ったよ」

 ……いや、俺さっきも喋ったし。

「お前さんの話も、この魔界耳でちっと聞かせてもらったがねえ。あたしにゃ到底信じられん。第一、なんで別の世界から来たって言う奴に、この世界の言葉がわかるんだい? ずいぶんと都合のいい話だと思わないかい、ええ?」

「そう言われましても……」

 返す言葉がないから、勘弁してください。

 なんだろうな……さっきから、理不尽に責められてる気がする。

 俺、あなたに何か悪いことしました?

 お願いだから、刑務所から出してくれよ。邪魔しないでくれよ。頼むよ。

 ……でも、どうやって説得すればいい? アッシュさんですら勝てない相手に、どう対抗しろって言うんだ? 

 理事長がその幼い顔をしかめる。

「なんだろうねえ。お前さんからは、あたしの大っ嫌いな臭いがぷんぷんするよ。ああ、嫌だ。そんなんで世界を救おうだなんて、まったく勘弁してほしいよ」

「え?」

 俺は思わず自分の腕を上げて嗅いでみた。

「阿呆が。誰も体臭の話なんざしてないんだよ」

 理事長がわざとらしく溜息をつく。

 その態度に、俺はだんだんと腹が立ってきた。

「……じゃあ、何の話っすか」

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