(13)


 最初にこの世界に来た日を入れて四日目の昼過ぎ。

 現場での作業中に、俺は例の白と黒のモザイク空間に包まれ、めまいと共に現実世界へと転移した。

 どうやら『三日周期』というのは、正確には『七十二時間周期』を指すらしい。

 首飾りとしていた転移石は『神界で作られたアイテムを使わなければ破壊できない』ため、俺はそれを身に着けたまま入所することを許されていた。代わりに魔法や諸々を無力化するという、手錠のそれよりもさらに特殊なリングを巻かれていたのだが、神界の力を封じるには至らなかったようだ。

 結果、三日間だけ異世界刑務所生活から離れることができた。待っていたのは退屈でクソな現実世界だが、これほどありがたいと思ったことはない。

 そうしているうちに、俺はふと気づいた。

 ──これこそ、俺が異世界から来た勇者である証拠ではないか、と。

 期待と共に、ふたたび七十二時間後、異世界へと転移する。

 結果、その期待は大きく裏切られた。

 服役中に突然消息を絶った俺は、あろうことか脱獄の容疑をかけられてしまい、懲罰房へ一直線に送られた。

 勇者の『ゆ』の字も出なかったぜ……。

 

 現実世界と異世界間の転移では『七十二時間と十分間の法則』が働いているようだった。

 例えば俺が最初に異世界へ飛んだのは、五月四日木曜のおよそ午後一時ごろ。その後、異世界で三日間過ごして戻ると、現実では十分しか経過していないことになっていた。

 その間、俺の体は現実世界から消失していたようだ。

 最初の転移の際はそれを知らなかった。そのため学校のトイレで目覚め、てっきり三日経って日曜日になっているものと勘違いした俺は、数学の授業中の教室にどんと乗り込んでしまった。

 今まで味わったことのない注目を浴び、脱水症状で倒れるかと思うほどの汗をかいた。

 それはさて置き、現実から異世界へ転移する際も同じことが起きるらしく、三日間を現実で生きた結果、俺の体は十分間だけ異世界から消えたのだ。

 それが無限牢獄の始まりだった。


 それから二回現実に転移したが……いずれも脱獄(未遂)扱いとなり、懲罰房から出ることはおろか、さらについこの前、刑期の延長が決まった。

 このままいくと、待っているのは懲役ン百年とかいうアメリカみたいな長刑期か。詰まるところ終身刑だ。

 その事実に気づいた俺は、泣き叫びながら転移石ネックレスをちぎろうとしたが、勇者の腕力を持ってしてもそれは叶わなかった。

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