(10)
『まずはボクを鞘から抜くのです。そうしたら声を出すことができるので、説得してみせるです』
「そ、そうなの?」
『はい。ボクの刃から出すオーラで空気を震わせ音を伝えるのです。安心してください。無事に解決してみせるです!』
もの凄い自信が、ひしひしと伝わってきた。
よし、俺にはどうすることもできそうにないので、ここは任せてみよう。
「わかった。頼んだぜ、相棒」
『はいっ』
俺は背中の鞘からガドッシュを抜いた。
輝く刃から青い光が弾ける。
相変わらずしびれるほどにきれいな剣だ。
状況はすこぶる悪い……だがこいつを握っただけで、何でもできそうな気がする。
何も怖くない気がする。
そのガドッシュが──相棒が、叫ぶ。
「そこの低能種族よ、この方を誰と心得えるです! 神から命を受け、この世界を救いにきた勇者様であられるです! 無礼なふるまいを慎み、丁重にもてなすのが礼儀だと思うです!」
いきなりの大演説だった。
「……何度も言わせるな、武器を置け」
警察官は、まったく相手にしなかった。
俺はそっとガドッシュを鞘に納めた。
『ゆ、勇者様、どうしてですか!?』
念話での抗議に、俺は首を振って答えた。
「だって、駄目そうなんだもん……」
『そ、そんな……』
ガドッシュはがっかりしているようだった。
こいつなりに懸命に考えたのだろう。そう思うと胸が痛む。
「ここはやっぱり黙って従おう。きっと話せばわかってもらえるはずだから」
俺はなだめつつ、鞘ごとガドッシュを床に置き、改めて両手を上げた。
俺は勇者。この世界を救うためにここに来たんだ。
大丈夫。誤解は必ず解けるはずだ。
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