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『まずはボクを鞘から抜くのです。そうしたら声を出すことができるので、説得してみせるです』

「そ、そうなの?」

『はい。ボクの刃から出すオーラで空気を震わせ音を伝えるのです。安心してください。無事に解決してみせるです!』

 もの凄い自信が、ひしひしと伝わってきた。

 よし、俺にはどうすることもできそうにないので、ここは任せてみよう。

「わかった。頼んだぜ、相棒」

『はいっ』

 俺は背中の鞘からガドッシュを抜いた。

 輝く刃から青い光が弾ける。

 相変わらずしびれるほどにきれいな剣だ。

 状況はすこぶる悪い……だがこいつを握っただけで、何でもできそうな気がする。

 何も怖くない気がする。

 そのガドッシュが──相棒が、叫ぶ。

「そこの低能種族よ、この方を誰と心得えるです! 神から命を受け、この世界を救いにきた勇者様であられるです! 無礼なふるまいを慎み、丁重にもてなすのが礼儀だと思うです!」

 いきなりの大演説だった。

「……何度も言わせるな、武器を置け」

 警察官は、まったく相手にしなかった。

 俺はそっとガドッシュを鞘に納めた。

『ゆ、勇者様、どうしてですか!?』

 念話での抗議に、俺は首を振って答えた。

「だって、駄目そうなんだもん……」

『そ、そんな……』

 ガドッシュはがっかりしているようだった。

 こいつなりに懸命に考えたのだろう。そう思うと胸が痛む。

「ここはやっぱり黙って従おう。きっと話せばわかってもらえるはずだから」

 俺はなだめつつ、鞘ごとガドッシュを床に置き、改めて両手を上げた。

 俺は勇者。この世界を救うためにここに来たんだ。

 大丈夫。誤解は必ず解けるはずだ。


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