第7話 管理人
ほかにもいろんな店の外観をながめては寮長の簡単な説明を受けてアーケードを抜けた。
そこからはすこしだけ入り組んだ閑静な住宅街だったけど、そこをさらに奥に抜けると突然密集地が拓け、いまも三世代が同居してるって感じの建物があった。
ここが俺が住むことになったシェアハウス型の寮で、六号室まであるらしい。
寮長はまず俺を管理人の元へと案内してくるそうだ。
最初の挨拶は大事だよな、と思ってたところに寮長が突然耳打ちをしてきた。
なんだいったい?
「管理人さんは通称パフェ盛りババアって呼ばれてるから」
「は、はあ」
パフェ盛りババア。
まあババアなのはわかった。
そこに突然現れた人影。
こっちがいく前に敵は姿を見せた。
見た目五十台後半をぎりぎり攻めてる感の六十三歳くらいのババアだ。
寮長は管理人の気配に気づいて声を潜めたのか? 管理人の髪型はチョコレートパフェのように盛り上がっていてスティックチョコの代わりとでもいうように
この町は俺の想像を絶するほどエキセントリックな人たちの
――新しく始まった日々の中、朝比奈涼介はたくさんの人達と出会う――って感じのナレーションが心に流れてくる。
管理人の頭ってスゲーチョモランマ。
なるほどこれがパフェ盛りってことか。
「僕ちょっとレポートあるから中に入ってるね?」
「あっ、はい」
なにっ!?
寮長まさか俺を置き去りに? いや寮長にかぎってそんなことはない。
わざわざ俺を駅まで迎えにきてくれるくらいなんだから。
「あんたかい新たな入居者って?」
「は、はい、そうです。朝比奈涼介と申します。今日からお世話になります」
管理人はファミレスですこし斜めに足を組むイイ女ふうに髪を
さらにもう一回梳いた、首の角度を変えてもう一回梳く。
その仕草気にいってんのか? それとも――これがあたいの角度。ってことか。
さらにもう一回おかわり
「この髪型かい。気になる?」
あっ、俺の視線がバレた。
管理人はファミレス店員がイケメンだったふうにトーンに変えた。
「えっと、ええ、あっ……いや」
「時代を先取ってるつもりでもね。結局いつだって時代は巡るもんなのさ」
ぜんぜん意味わかんねー!!
危うく――ババア意味わかんねーっす!!っていいそうになった。
なんかドキュメンタリー番組に撮られてる感じで意図的に目線を外してるし。
「大化の改新も明治維新も大正デモクラシーも時代の分岐点なんだよ」
管理人はなおも自分に溺れて
大化の改新、明治維新、大正デモクラシー時代の分岐点ってそのままだよな? いってることふ
管理人の良いこといってやった感がすごい。
そして管理人は――本当はチーズオムドリア食べたいけど、そこまでがっつく女じゃないのよって策略でシーザーサラダに変更的な空気をかもした。
「昭和のオイルショック。あれは凄かったね、借りたDVDが三ヶ月後にタンスのいちばん下から出てきたくらいのショックさね。ふっ」
ふっ。じゃねーよ!?
昭和だけベクトルが別だよ。
なんでタンスのいちばん下なんだよ、いちばん下なんて故意じゃねーか? せめて上段であれ!!
管理人がまだ自分に酔ってるから俺は管理人の頭を一点集中した。
キューティクルとモイスチャーが無理心中してるのが見えた。
――キューティくん、来世はふたり一緒にマイナスイオンがたくさんある頭に生まれようね?
――ああ、モイスちゃん。こんなステップ気候は耐えられない。
そんな泣ける感じの想像をしてしまった。
こ、これは、あの便所シリーズに引っ張られたな。
やるなガジロリズム、映監督タダもんじゃねー。
そうこうしてると管理人は吸うとこあんのか?ってくらい細いタバコをくわえてた。
先端におもいっきり殺虫剤を吹きかけた。
辺りがすこし煙る。
例の殺虫剤だ。
そこにアウトドア用ガスバーナーで火をつけた。
「ガツンと来るね~!! やっぱりC10H16O2の二価のエステルくらい入ってないと吸った気しないねえ」
総長の化学式!!
メンソール的に使用してる。
なんてどてらい……。
オリジナルのタバコをふかしはじめた管理人はなんでだかわからないけどスゲー
ただ人間がその物質に耐えられるのか……けど、まあ管理人だし、しっかり管理できてるんだろう。
「あとの詳しい説明は妹の
美優か。
名前だけかわいいな。
けどババアの妹だしな~?
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