どうして、こうなったかというと・・・



桜田門へ走っていく途中に後ろからやってきた黒塗りのセダンがおれを追い越した。そういうこともあるだろうと、おれはランニング続行。

 セダンは走行中に、後部座席のドアが両側から、開き、男共が飛び出した。

 周囲の車がびっくりしたのか、急ブレーキを踏んだ。そりゃ、驚くよな。

 他人事を決め込むおれの前に黒服とサングラスという組み合わせの筋肉トリオが取り囲まれた!目標はおれかよ!なんで!

 男二人はおれの両腕をがっとひっつかみ、急停止し、左ドアが開いたまま、おれを押し込んだ!あれぇええ、このまま、おいら、車の中で襲われちゃうのー

 筋肉黒服男はおれの左隣にぴったりと座った。おれの貞操が危ない。

 右隣のおっさんはおれに笑いかける・・・ぼくがそんなにお好みですか・・・

 奉仕を要求されますか・・・もうちょっと可愛いほうがよかったなあ・・・

「初めましてかな?金田玉吉くん」

「あんた、だれ?」

 よくみれば、黒服以外はちゃんとした身なりをしたスーツ姿の中年男性ばかりであった。

 運転席には泣きぼくろにでっかい黒いできものができたおっさん。

 助手席には四角い顔のおっさん。

 おれの右隣は丸眼鏡ででっぷり頬肉がたるんだおっちゃん。

 おれに話しかけたのはこの頬肉がたるんでいるほうだ。初対面であることは保証しよう。

「わたしの顔を知らないのかね?」

 しらねえって。だれだよ・・・用事はちがうのか?おれの身体が目的ではないようだ。

 おれはおっちゃんの顔を覚えるほど、ゲイじゃないね。

「接触方法が乱暴ですまなかった。緊急事態が起こった、君に助けて欲しい」

「だから、あんただれなんだよ」

「わたしの名は葛木正英だ。日本国の官房長官だよ。事実上のナンバー2だな・・・それと助手席に座っているの警察庁長官の長沢くん、運転席は内閣調査室の安国寺くんだ」

 四角いほうが、警察の親玉の一人で・・・内閣調査室ってなんだ?

「まったく、ぴんとこないのか・・・長沢くん、ほんとうにだいじょうぶなのかね?この男、単なる変質者ではないか?」さりげなく、ひでーこと言われた。

「金田君!テレビをもってないのか?ラジオとかないのか?」

 おれの部屋はタンスと携帯電話の充電器しかないんだ。NHKの集金人も泣いて帰ってるぜ。

「ということは・・・この国の総理の名前は・・・」

知らん。知っていてもお腹いっぱいにならん!

「で、おれになんの用事ですかー?昇給の話じゃないなら、このまま、職場へ向かうぜ?」

助手席の警察庁長官はおれに向き直り、何かを躊躇をしながらもある台詞を吐き出した。

あんだって? おれの聞き間違いか?そういうお遊びか?

「もう一度、言ってくれ。御願いします。まさかとおもうが・・・パンツを・・・」

「この写真の少女のパンツを盗んできてくれ」

 差し出された制服姿のJKの写真。むう、中々可愛い。

「それはもうアウトだろーがーーーーーー」

「君にしかできない大仕事だ。頼む。国家の危機なのだ」

 運転席の内閣調査室という男はこうさらに続ける。

「国家機関が女子高生にパンツを脱いでくれと頼むわけにはいかないだろ?」

 おれもたのめねーよ!おれでなきゃいかん理由を言え!

 あ、性犯罪者・・・そうですか、くすん。

「理由と条件次第だ。とりあえず、説明してくれ」

 官房長は静かに語る。長くなるので要約しよう。

 日本国には1000兆円を超える借金がある。それは多くは国債であり、その金利を毎年、支払を続けている。国家予算は、その借金の金利払いを含めて、決められる。

 ここで問題が起こった。日本国の首相がテロリストに狙撃されたのだ。

 銃ではない。吹き矢なんだそうだ・・・首相は昏睡状態に陥り、216時間以内に処置をしなければ、脳死するという特殊な神経毒。

「パンツの話がないぞ」

「変質者らしい質問だ。まあ、聞け。予算案は首相が出席する閣議決定で承認され、国会で可決される。首相がいないと予算が通らん。日本国は破産する」

「パンツの話は?」

「まあ、聞け。その毒は分析中だが奇妙な毒でな。女性の分泌液が解毒剤になることがわかったのだ。その量はパンツに付着するわずかな量でかまわんそうだ」

 ああ、おしっことかそういうものね。

 まったく血縁のない女性のパンツでは死に至る毒なんだそうだ。狂ってるな。

「できれば、血縁筋の女性のほうが効果が高いらしい。しかし、首相の娘とか、孫とか近すぎる血縁でもだめなんだそうだ。そこでスーパーコンピューター京都の出番だ」

 そんなことでスパコン出動!この国は大丈夫か?

「演算の結果、99.99999875642419%の確率でこの少女のパンツを首相の頭にかぶせれば、万事解決だ」

「帰らせて頂きます」筋肉男がおれを押さえ込む。いやあ!おうちにかえしてー

「頼む!この国を救えるのは、君のような変質者が必要なのだ!」

「やだ!自衛隊の空挺部隊のマッチョに頼めよ!それかホストに頼めよ!」

 内閣調査室のおっさんはそれをきっぱり否定する。

「どちらもお嬢様育ちの高校生とさりげなく、接触はできない。時間がかかりすぎる。少女を200時間以内に可能なのは君だけだ。理由 痴漢だから」

「日本国の破産は世界中のCDSに与える影響ははかりしれん!日本という国を中心的に経済の核爆発が起こるんだ!」

 専門用語をつかうな!頭が割れる!おれは気を取り直し、笑う。

「まあいい・・・条件次第だ・・・」

 官房長はおれの条件を呑み、おれの携帯電話にその証拠を打ち込む。

 

 時間は?場所は?どこで変態行為を働けばいいんだ?


 残り176時間・・・場所は小田急線だ。

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