やっぱり、こうなった!

周囲は凍った。予想の範囲だ。周囲のJKどもはおれのほうを見ながら、学校へ入っていく。

 二人はびっくりしているようだ。これからあと何度か経験するんじゃないかな?

 二人は顔を見合せ、おれを見直し、娘子はこう言った。

「いやです」

 これも予想の範囲!当たり前すぎて、つまらないね!

「パンツ脱いでくれないと!いろんな業界の人が迷惑かかっちゃうんで、脱いでくれませんか!」

 必死の形相。おれは必死だ。

「うむ・・・むーちゃん、この御仁になにか事情があるようだ」

 娘子さんの親友ナイスフォロー、よくみるとあんたもハンサムに見えるぜ。

「事情を話してくれませんか?私たちはいまから朝練があるんで・・・」

 おれは早口でまくしたてた。

 まず、日本には国家予算があるということと、議会にかける予算案を承認するには首相の閣議決定が必要なのだが、その首相はいま、昏睡状態にあるということをかいつまんで説明する。

「・・・首相の頭に私のパンツをかぶらせる必要があるんですか・・・」

「そう、そのとおり!このままだと日本が危ないのよ、わかるでしょ」

 娘子と楓は何事か耳打ちをしている。

「変態のおにいさん・・・その話、嘘ですよね・・・?」

「はい?」誠心誠意、ほんとうのこと話しましたけどーー

「そんな、とっさでつくったとしか思えない話をだれが信じるんです?」

「うむ、もっともである」

 楓は肯いた。

「いや、簡単だからさ!ノーパンじゃまずいでしょ・・・そのために・・・」

 おれはズボンの左ポケットから、女性モノのパンツを取り出した!

「これは予備のパンツだよ!もらったからすぐ帰るよ!」

「きゃあ!」娘子だけではなく、見ていたJKも弱い悲鳴をあげる。

 あれ・・・仕方ありませんね・・・あげましょうという流れにならないよねえ・・・!

 一閃。

 おれのシャツの腹部分が一文字に割れた。肌一枚ふかければ、出血するとこだった。

 日本刀の抜刀術!!これをできる女子高生に会えるとは・・・会いたくなかった!

「むーちゃんの答えはわかったな?NOだ」

土下座状態のおれはその放たれる殺気を前にのけぞった。

 後頭部を打ち、無理矢理、ブリッジをしたような形になり、上半身をたたきつけた。

 土下座しながら、ブリッジをしようとして、失敗したのだ。

 これは痛い!かまってはいられない。

 パンツは奪取できない!

 「かーえーれー!」「かーえーれー!」「かーえーれー!」「かーえーれー!」

 JKたちの帰れコールの連呼が聞こえなくなるまで、おれは無様に卑屈に、四つん這いのまま、走って、逃げた。命まで賭けられるかよ?

 どこかで拍手が聞こえていたが、おれは気にする余裕などはない。


 もう一度、言う。おれは逃げた。戻る気はさらさらない。

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