外見と中身と聖なる剣と


「「えくすカリバー?」」


 我が家の居間。テーブルの向かい側に座る天原さんに向かって僕と母さんは同じタイミングでその名を口にした。


 神々しく輝く僕のちんちんは突如、部屋の外に漏れだすほどの光を放ち、それに気づいた母さんが部屋に飛び込んできたおかげ(?)で、今では落ち着きを取り戻したかのように何事も無くパンツの中でちんちんとして鎮座している。


「はい。えくすカリバーは世界の危機を救う唯一の武器です。それは数千年に一度、この世界に滅亡の危機が迫った時にのみ純潔な男性器に宿る聖なる武器なのです」

「世界の滅亡の危機って・・・・・・今いちぴんとこないんだけど、母さん知ってた?」

「う~ん。ママ、もうスパイは卒業して今はただの主婦だから、何にも知らないの。ハル君のエッチな本の隠し場所とか、内緒で買ったオシャレな勝負パンツとかしか分からないわ」

「何で調べちゃうの! 知ってても黙っててよ!!」

 

 ゴホン、と天原さんが咳払いをした。

「いいですか、今まさに、地球が大ピンチなのです。悪魔が襲来して世界各地で目も当てられないような悲惨な事件が多発しています。ここ日本でも残忍な事件のいくつかは悪魔の仕業によるものと報告が来ています。それを全て解決できる希望の光が翔春君!・・・・・・のチンチンなのです!!」

「ひ……悲惨な事件って?」

「暴力、破壊、詐欺、男性を不能にするなど、内容は多義にわたっているわ」


な……なんと恐ろしい。


「でも、こんなかわいらしいチンチンがどうやって世界を救うのかしら? 平和のシンボルとしてお神輿に掲げるとか?」

「母さん、真面目に考えてよ。ていうか何気に息子の息子を貶すの止めて。超ブルーになる」

「長さや大きさは関係ないのです! 聖剣に選ばれた人間は何らかの力を得て悪魔達から世界を守る英雄となる。天原家に古くから伝わるわらべ歌にそう記されています。」


 そういうと天原さんは立ち上がり、一度大きく深呼吸をしてからゆっくりと手拍子を始めた。大体83bpmぐらいのスピードぐらい。

それにつられて母さんも楽しげに手を叩き出す。


「も~ののけ江戸にきったときは~、えくっすかりばぁ~たずさえてぇ~、ずっばずっばずっばずっば扱きたまへ~ はんぁ~ ちっきゅうをま~もま~もま~もれや おんなしらずはしぬまでしらず かかってこいこいもののけやぁ~」

 手拍子が叩き終わり、母さんがうっとりとしながら天原さんに拍手を送る。

「素敵な歌ね。今の歌詞で大体の事は分かったわ」


 何が分かったんだ!全然わからんわ!!

 もう意味不明な単語と奇文だらけで頭が混乱してきたので、テレビでもつけて少し休憩しないとこれはもうアレです。辛いです。


『緊急ニュースです! 謎の未確認生物が市街地で暴れております! ビルや建物などを破壊して怪我人も多数出ている模様。近くの住民の皆様は安全が確認されるまで決して外へ出ないでください!! 繰り返します。謎の未確認・・・・・・』


 テレビを点けると通学の際に通る駅前のビルや建物等が黒いエイリアンのような生物にボロボロに破壊されている映像が映し出された。特撮ヒーロー物ではない、現実のニュースだ。


「えええええエクソダム!! こいつらです!! こいつらが世界を滅ぼすと言われているエクソダムですよ!!」

「まぁ! ハル君、グッドタイミングよ。いってらっしゃい」

「えっ?今まさに外に出ないでくださいってテレビで言ってたじゃん」

「あら、今あの怪獣みたいなのに立向かえるのはきっとハル君だけよ。ちなみに、お母さんはこれからちょっと用事があるからしばらく家を空けるわね。戸締りよろしく~」

「ちょっと用事って、母さん今出たら危ないって!」

「大丈夫よ。ハル君が何とかしてくれるも~ん☆」


 そういうと母さんはふらりと出て行ってしまった。

 昔からそうまけど無責任というか行き当たりばったりというか、なんて自由奔放な人なんだろうか。


「八代君。私達も現場へ行きましょう!」

「・・・・・・やっぱそうなります?嫌だな~。これぜったい僕が戦うパターンじゃないですか」

「つべこべ言わずに! せっかくえくすカリバーに選ばれたんだから、地球の1つでも救ってみせて!」

 

 天原さんに強引に引き摺られるように僕は危険生物が暴れている現場へ連れて行かれた。

戦い方も分からないのにどうやれば良いんだ? せめて光るチンチンからビームでも出ればなぁ……

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