第15話 緒戦

「で、佐世保まで行くってどう行くんだ?まさかJRで行くって訳じゃないんだろ?」

「JR?ああこの国の移動機関でしたか。もちろん違います、では取りあえず屋上に参りましょう」


 と言う訳で、弁慶さんに抱きかかえられて、ひょいと屋上へ。このアパートは2階建て1階4部屋のボロアパートだったのだが。いつの間にか、家主が牛若名義になっていたり、弁慶さんが色々とリフォームを行っていたりする。要塞化処置を施したとかの寝言を言っていた気がするので、将来解体することになった時、現代の技術で解体できるのかほんの少し心配だ。

 初めて上った屋上はコンクリートの平面だった。まぁ特にこれと言っておかしい所は無い。築年数の割にはヒビ一つないのは、弁慶さんが手を入れているからだろう。


「それでは、弁慶準備せよ」

「了解でございます」


 ブンと言う低い音が静かに屋上に響いた……。


「え?何したの?」

「ん?ああ、主殿には見えませんか。おい弁慶」

「そうですね、失念しておりましたでございます」


 と言い、弁慶さんがゴーグルを渡してくれる。そう言えば俺以外戦装束だ、気が早い感じもしないが、敵の目の前で着替えるのは魔法少女で十分と言う所なのだろう。


「よっと……ってなにこれ?」


 ゴーグルを付けると、目の前に現れたのは巨大な機械。砲身を縦切りにした大砲の様に見えて不安感がみるみる高まってくる。

 そして、一人じわじわとテンションを下げていると、牛若は勝手知ったるとばかりに、砲身に設置された、ポットの先頭に乗り込む。


「さっ、それでは主殿いざ出立しましょう。おい弁慶手伝ってやれ」

「了解でございます」


 そう言うと弁慶さんは俺をお姫様抱っこする。


「いや、いやいやいや!どう見ても人間ロケットとかその類じゃねぇか!だからお前ら基準で考えるんじゃねぇよ!」


 全力で抵抗するものの、弁慶さんの拘束に敵うはずなく、座席に押し込まれベルトで固定される。


「牛若様、準備できましたでございます」

「よし!では出立!」

「だから、ちょ――」


――ズドン――





「ふむ、先ずは近場の山に移動してきたが、これからどうするものか」


 騒動となった転移先の施設の隣に山があったので、八正空間展開中にぞろぞろと移動してきたのはいいものの、問題はこれからだ。

 私達が請け負った任務は3つ。

 先ずは平行世界転移の実証試験。これは成功。

 次は連絡方法の確立。これはレプリカさん達の仕事で、私達はその補助。

 最後が、こちらの世界に先行している勢力の排除。なんですけど……。


「えーっと、002さん。通信施設の設置場所ってこの辺ではどこがベストですかね」


 退路の確保と言う点でも、元の世界との連絡手段はあった方がいいので、事前の打ち合わせ通り、先ずはそこから攻めてみる。


「……南方に廃棄された通信施設と思わしきものがあります。あそこを占拠し改修するのが最良と思われます」

「あー、ありますね3本立ってます。でも占拠ですかー、なるべく地味に事を進めたいのですが……」

「はっはっは!何を言っておる巴!どうせこの国は私の軍門に下るのだ!早いか遅いかの話よ!」

「いえいえ、高々100人で何をしようと言うんですか。お願いですから自重してください」

「なーにを弱気になっておる。あの下郎の装備を見たか、裸同然だったではないか」

「まぁ、あの警邏の方の装備やここからの風景を見る限り、技術レベルは大したことない世界の様ですが、それでも多勢に無勢ってレベルの話じゃないですよ!焦土の城下に屍の城に住んでも、住み心地良くないですって!」

「ふむ、まぁ私にも弱者を嬲る趣味は無いな。だが見よ巴この光景を!」


 そう言って義仲様は眼前に大きく手を広げる。そこに映る風景は正に絶景だった。片手には青々と茂る山、片手には無数の小島を抱いた蒼く透き通る海、その全てが眩しく輝いていた。どれも私たちの世界では過去の映像でしか見れないものだった。


「これだ!そう!これこそが私があるべき世界だ!私が収めるべき世界だ!そう!今までの艱難辛苦はこのためにあったのだ!

 この景色を前にすれば、あのような報酬など微々たるものよ!元の世界にいる家臣共を何とかこちらの世界に呼び寄せ、皆で私の世界を築くことこそ正道よ!」


 と、堂々と任務放棄とも取れる発言をする義仲様。データリンクは出来ないので、レプリカさん達の心中は察しきれないが、発言はしっかりと記憶されているだろうから、後の事を考えると冷や汗が出る、いや出せないけど。


「まぁまぁ義仲様。確かに仰ることは分かりますが、先ずは兵に二言なし。その計画は先に請け負った任務をキッチリと仕上げてからに致しましょう」

「うむ、勿論だ!この義仲に二言なし。先ずは指定のあの塔を占拠してくれよう!行くぞ者ども!」


 号令と共に山を下る。光学迷彩を利用できるとはいい、100名での進軍は衆目を集める可能性がある。よって、20人一組の小隊を組んで別ルート、あるいは時間差で進軍する。直線距離では12~13kmだが、陸路ではその倍と言った所か。


 先陣を切る我々は高架式の道路を突き進む。先ほどお邪魔した砦や港を右手に眺めつつしばらく進むとまた山に突き当たる。

 そしてトンネル。車両の生み出す轟音や汚れた空気の中を進む。しかしこの程度の大気汚染は向こうでは軽い程度だ、先ほどの義仲様ではないが、移住できるのならしてみたいものだ、フィルター洗浄が随分と楽になるだろう。


 トンネルを抜けると風景が変わる。背の高い建物が減り、民家と思わしきものが増えてくる。どうやら先ほどいた場所がこの街の中心地だったらしい。

 道路が混みあってきたので脇道も利用しながら道なりに進む。分岐点を南に進み川を二つばかり渡った時だった。


「義仲様!左後方より高速で接近してくる飛翔体あり!」





「牛若様。対象発見いたしました」

「そうか、続けて探れ。

 主殿ー!着きましたよー!起きてくださーい!」


 パシンパシンと頬を叩かれる感触で目を覚ます。


「うっ、おうぇ、吐きそう」


 頭が痛い、眩暈がする、吐きそう、どうやら発射の衝撃で気絶していたようだ。


「対象、迷彩利用中、チャンネル4で追跡、編成、人間1、アンドロイド19」

「20か、眉唾物だったが100倍の出力と言うのも、あながち伊達ではなさそうだな。

 よし、そのまま突っ込むぞ」

「はっ!?あほか!お前らはともかく俺は死ぬわ!」

「ご安心召され主殿、この船は外殻が切り離せるので、突っ込むのはそこだけでございます」

「そうか、なら安心、って、馬鹿か!地上は大参事じゃねーか!」

「ご安心を、幸い下は無人の運動場の様です、人的被害はございません。敵の頭上で見事爆散させ、全弾的中させてやりますとも!やれ!弁慶!」

「了解でございます。それでは外殻発射でございます」

「ちょ――」


 ガンと凄まじい勢いで安全ベルトが体に食い込む。その猛烈な痛みは、気絶と言う逃避を許してはくれなかった。

 物凄い勢いで射出されていく、外殻。いや正確には操縦席側が制動を掛けられているのだろう。なんであれ数秒後には、地上にシャレにならないレベルの運動エネルギーやらが降り注いでしまう訳だ。

 目標地点はグラウンド。休日で偶々人気が無かったからよかったものの、そうでなければ大参事だ、いや直ぐ隣に国道が通っているので、衝撃波でやっぱり大参事は避けられない予感に目の前が暗くなる。



「義仲様!敵!飛翔体加速!激突します!」

「くっ!何を考えとるのだこの戯けが!私の収めるべき土地を荒らすなど言語道断!者ども受け止めろ!」

「了解!002さん達はフォローをお願いします!」


 巴は両の巨腕を落下してくる輸送船に向ける。


「障壁展開3層」


 射線上に半透明の力場を展開する。

 木曽義仲の窮地を、幾度も助けて来た巴の最大の長所は剛力だ。

 彼女の前では音速で飛来する輸送船を止めることなど、キャッチボールに等しい。


「キャッチです!」


 両掌と同期した力場に輸送船が接触した後、トラバサミの様な勢いで両手が組まれ、曇った音と共に、力場に囚われた輸送船が鉄塊と化し、その後静かに地面に下ろされる。


「おい、見たか弁慶。問答無用の力技で、あれを受け止めたぞ」

「そうでございますね。流石は巴と言った所でございます」


 総勢20名の小隊が待ち構える中を、牛若達は近所を散歩するような呑気さで、悠々と歩を進める。

 そのあまりにも堂々とした出現に、義仲たちは最初はあっけにとられていたものの、すぐさま気を取り直し円を描く様に包囲した。


「牛若、貴様牛若か!この無法者の小娘め!徒に民草が耕す田畑へ狼藉を働くとは何事か!」

「囀るなこの裏切者。法度を犯し、勝手にこの世界へ進攻してきたのは貴様らの方だ」


 言葉が通い合う距離まで間合いを詰めた両者は、鏑矢を合わせ合うように、罵声を交わし始める。


「はっ!その様な仕来り、所詮源氏が勝手に定めたもの。この私が従う謂れはないわ!」

「それに、見たところ、そこらに突っ立っている木偶共は巴の複製品だな。準一級人権保有者に指定されたアンドロイドの複製は禁止する、と言う法度も無視しておるな。この下種めが」

「はっ!知った事か!私は用意された道具を使っているに過ぎん!これもみな貴様ら源氏の支配を打ち破るためよ!」

「そもそもが、源氏の裏切者である貴様がこうして息をしていられるのも、兄上の寛大な処置があっての事。それを忘れての此度の狼藉、犬畜生ですら恩を感じると言うのに、貴様はそれ以下だ。切れ、切れ切れ、とっととそこで腹切って詫びて見せよ。それすら出来ぬようなら畜生以下の生ごみだ、細かく刻んで燃やしてくれよう」

「きっ貴様!この私――」

「生ごみ、違うな。生ごみならまだ堆肥として使い様がある。糞便すらもそれその通り。貴様はそれ以下、生ごみ、糞便の存在よ。使い道も、使いどころも、使い様も無いくせに。無駄に生き、無駄に浪費し、無駄に無駄をまき散らす。災害と言った立派な物でなく、災厄と言った荒ぶる物でなく。只々目障りに、只々しつこく、視界の端に存在しつつけるカビやシミのような存在よ。小さく惨めで矮小な存在の癖に――」



 血を血で洗う戦いが始まると思いきや、悪口合戦が始まっていた。

 どうしたものかと思っていると、敵将である金色の鎧を纏った木曽義仲の隣で、オロオロとしている女性と目が合う。


 彼女がアンドロイドの巴。顔こそは俺達をぐるりと包囲しているアンドロイド達と同じだが、一挙手一投足が柔軟と言うか人間臭い。複製品の皆は弁慶さんよりはるかに人形然とした無表情っぷりだが、彼女はベクトルこそ違うが屋島さん並に表情豊かだ。


 それに、顔以外でも違いがある。複製品の皆は簡素な銀の鎧装束だが、巴はベースこそ同じだが彼方此方に工夫がみられる。何より特徴的なのが巨大な手甲だ、いや手甲と言うか腕自体が大きい。プラモデルで言えば1/144スケールの胴体に、1/100スケールの腕を付けている様な違和感だ。


 あっ、どうも。いえいえ、こちらこそ。と言った感じで会釈をしあう。主同士が遊んでいるので暇なのだ。まぁ、牛若は俺の主と言う訳ではないし、義仲は悪意の機関銃うしわかの猛攻を受け大破寸前だが。





「えぇい巴!何を貴様敵とじゃれついておる!」


 形勢不利を感じたのか、己の従者に八つ当たりをする義仲と目が合ってしまい、会釈をすると、思いっきり顔をしかめられた。まぁ分からんでもない。


「あーーん?なんだその小僧は?アンドロイドとは言え女子に抱えられる様な餓鬼が戦場で何をしている!」


 なぜなら俺は『危ないから』と言う理由で、ずっと弁慶さんにお姫様抱っこされたままだからな、場違い感が半端ない。


「貴様。某のこの世界での主殿に何か文句があると言うのか」


 義仲の言葉に牛若が反応する。今までずっと彼の話を無視して一方的に罵詈雑言を叩きつけて来た彼女が珍しく会話のキャッチボールをこなしていた。

 無論義仲は、此処に牛若の穴があると感じ、ここぞとばかりに攻め込んだ。


「主?主だ?ははっ、はははははは!滑稽滑稽、正に滑稽!独りで立つことも敵わぬ小僧っ子が貴様の主だと!お似合いだ、お似合いじゃないか小娘!

 彼方の世界では、親の七光りに預かるだけの狸を主と慕い。こちらの世界では、そこなアンドロイドの涎掛けを主と慕う。見事見事!正しく貴様と言う無知な小娘を象徴する主だよ!」


 そう言い、義仲は高笑いをする。

 が、今まで淡々と冷酷に罵倒を続けていた牛若が、その言葉を受け気配を重くする。


「貴様、わが主を愚弄したな」


 今まで、腕を組みつつ、ゴミを見るような目つきで義仲を見下ろしていた牛若が、太刀に手をかけ腰を下して睨み上げる。


「っく!」


 一触即発。ある意味で弛緩していた戦場を、一瞬で肌をひり付かせる空気が支配する。殺気に当てられ、義仲も戦闘態勢に入り、つられるように、義仲の兵も牛若に照準を合わせる。


「首は取らん、貴様には語ってもらう事があるからな。だが、手足の2・3本は前金代わりに頂いていく」

「く、はは。何の壮語を。貴様、今の状況が分かっておるのか」


 総勢20名の小隊に、ぐるりと包囲される牛若。体中に見せつける様に当てられたレーザーポインターの赤い印が、不気味な模様を示している。勿論その照準は傍に立つ弁慶と真一にも当てられている。


「状況だと?貴様ら雑魚がいくら群れようが、どうと言うのだ。

 …………なぁ義盛」

「義仲様危ないッ!!」


 義仲の足元より、音もなく影が立ち上がる。巴は義仲を弾き飛ばしつつ、義仲の背後に右裏拳を叩き込む。

 澄んだ金属音が鳴り響き、影は一足で巴の射程県外へ身をひるがえす。


「透破(すっぱ)かっ!」


 義仲は、飛ばされながらも背後を振り返り、小柄を投擲する。


「何処を見ておる、クソ虫めが」


 瞬きの間に間合いを詰めた牛若は、腰に佩いた太刀を抜き打ちする。


「させません!」


 巴は踏み込みつつそう叫ぶ。

 巴の盾の如き巨腕は、宙に浮く義仲の後ろ髪を霞める起動で振り下ろされる。両の巨腕を巴の怪力で操れば、それは武器と言うより、重機械の一撃に等しい。牛若の細腕ごと刃を砕かんと掘削機のハンマーの如き拳が振るわれる。


―跳―


 接触の直前、牛若は左手で太刀の柄尻を操り軌道を変える。燕が舞うように軽やかに、だが峻烈な勢いで垂直に跳ね上がった太刀は、無防備となった巴の首を狙い迫る。


「甘いわ小娘!」


 巴の胸中で横跳びする義仲は、左腕で逆手のまま太刀を抜き、胸を反らした巴の眼前、牛若の刃の軌道に、刃先を差し込み盾とする。

 キンと一音、刃を合わせた澄んだ音が鳴り響く。

 それとかぶさる様に轟と暴風が吹きあがる。今度は逆にがら空きとなった牛若の胴体に向け、海老反りになりつつ土を巻き上げながら巴の拳が振り上げられる。

 当たれば内臓が弾け飛ぶ様な一撃に、牛若は軽く足を添え独楽の様に回転し、猫の様に四肢を付き、着地ざまに地を這う横なぎの一閃で巴の足首を狙う。


「甘いと言っておる!」


 義仲は、逆手に抜き上げた太刀をそのまま突き下ろし盾せんとする。


 ―廻―


 牛若は地に付けた左手を押し、その反動で横跳びし間合いを開ける。


「どっせい!」


 巴は不安定な体勢のまま、牛若を追い跳びかかる。海老反りから半回転、両手を振り上げそのまま力任せに叩き付ける。


 ―刺―


 だが、両拳が叩きつけられた場所に牛若の姿は無い。牛若は跳び退く途中で地面に太刀を突き刺し勢いを止め、巴の下を掻い潜る。

 そのまま地を這うように前に進み、こちらに向かう義仲の胴を薙ぐ。


「くっ!」


 勢いを削がれた義仲は、一閃をかわしたものの太刀を振り上げたまま腰が浮く。


 ―返―


 その隙を逃さず、重心の掛かる前足を捩じり、切り返しの打ち上げで内側より右肘を狙う。

 義仲は、右腕を逃し、下がりながらの左手で打ち下ろし。

 牛若は、途中で切り返してそれを弾く。

 取って返した巴は、牛若の上体へ振り突き。

 牛若は、それをしゃがみかわすついでに義仲の内股に切り込み――



 少し向こうでは、牛若が2人相手にハイスピード超人バトルを繰り広げているが、バンピーである俺には何が何やらさっぱりだ。

 だが、こんな俺でも現在の状況が大ピンチなのはいやでもわかる。


「弁慶さん!大丈夫なんですかこれ!!」

「さぁ、どうでございましょうね」



 現状は控えめに言ってサンドバック。俺と言うお荷物を文字通り抱えている弁慶さんは、遠隔操作で3枚の盾の様なチェーンソーを振り回しているものの防戦一方だった。

 何しろ相手は包囲を一定に保ったままで、けして間合いに入ってはこない。

 包囲は2層。外層は射撃を繰り返し、内層は中距離から、力場だか重力壁だかをガッコンガッコンぶつけてくる。おかげでこっちはピンボールの様にあっちに弾かれこっちに弾かれつつ、何とか捕まらないように凌いでいるだけだ。


「そろそろ頃合いでございますか」

「はっ?なにが!?」


 どう考えても追い込まれているようにしか思えないが、弁慶さんはいつも通りの淡々とした言葉を綴った。

 周囲を確認する、ステルス状態で戦闘を行っているものの。ドッタンバッタン大騒ぎしている事は隠しきれるものでなく、遠目からこちらを覗き見ている人もチラホラと見える。牛若達は向こうのグラウンドで戦っているものの似たような状態だ…………ってあれ?いつの間に野球場まで来ちまったんだ?


「では忘れ物のお届けです」


 弁慶さんがそう言うと、上空にさっきまで俺たちが乗っていた輸送船の操縦席が現れた。さっき砲弾代わりに使った外殻部の中身だ、確認する余裕などなかったが、しれっと上空に残したままだったのか!

 操縦席はクラスター爆弾の様にバラバラに別れ、流星雨の様に降り注ぐ。危険を感じた巴の複製品たちは一斉に散会しようとするが――


「残念ながらそうはいきません」


 いつの間にか、バックネットの外側に黒い人影が立っていた。そして野球場のネットを超えて逃げようとしていた彼女たちは、バキンと言う音と共に透明な壁に当ったように宙で動きを止め白煙を吹きながら地に落ちた。

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