26話 ラッキースケベ


 すでに四度目。


ギャルを連れて昼下がりには水場の拠点へと着いた。




「おー、なんかキャンプ場みたいだね?」




 周りを広めに整地したようだ。


木の葉の屋根付きの寝床に、石で囲ったカマドには煙が上がり木で作ったトライポッドも備え付けられている。 少し外れた所では小さな壁のような物を作っていた。




(トイレかな……)




 妙齢の女性の野糞を覗いてしまった場所の近くだ。


ふと、辺りを見渡すと女性陣がいないことに気付いた。




「ふむ……?」




「帰りが遅くなるなら、言って欲しいものだが?」




 どこに行ったのか探していると、機長が機嫌悪げにやってきた。


そういえば、浜辺に行くと伝えるの忘れてたな。




「……浜辺の様子はどうだった?」




「特に変わったことはなかったかな?」




 ギャルの元カレがしおらしくなっていたことくらい。


他の連中の姿も見えたが、磯で貝を取ったり、水を作ったりしていた。


少し、木陰で休む者達が多いのが気になったけど。




「……そうか」




 一言呟き砂浜の方角を見つめる機長。 その表情は心配そうだ。


とはいえ、短期間で往復するなど無理だろう。


機長一人で行ったところで意味はないし。 あちらを心配しても今できることは少ない。




「放っておいてよかったの?」




「問題ない」




 機長が呆けてる間に移動する。


 呑気に突っ立ってる暇はない。 寝床作りと食事の確保。


けっして無断で行ったことを責められる前に逃げる訳ではない。




「あ、山田さん」




「今ちょっと忙しいから、また後でな!」




 イケメンから声を掛けれらるが、適当にあしらい通りすぎる。




「……よかったの?」




「問題あるまい?」




 特にイケメンに用はないし。


暗くなるのは早い、すぐに取り掛かりたいのだ。


 自分の使っていた寝床に来た。


他の者達からは少し離れた場所だ。 ギャルの分の寝床もここに作ろう。




「少し休んでていいぞ」




「ん、ありがと……」




 移動中は疲れたなど、ギャルは一言も言わなかった。


もちろん休憩を挟んだりゆっくりと移動はしたけど、でもそれなりの距離の山道だ。


疲れないはずはない。


 


「ちょっと水を汲んでくる」




 ギャルのペットボトルも受け取り、沢へ。


ここから少し降りた所だ。 すぐに行って帰ってこれる。


……そのはずだったのだが。






◇◆◇






「――っ!」




 物音がしていた。




(まずった……)




 上の拠点にいなかった女性陣だろうと当たりをつけ、出くわさないように上流へと向かった。 少しの音も立てず木や岩の影や草むらを移動し、気づかれないようにその場を去る。 




「はぁ……! 気持ちいい、水でも洗えるだけましね」




「うんうん。 あぁでも、お腹空いたなぁ……。 バナナとココナッツだけじゃねぇ……」




「でも痩せたんじゃない? この辺とかっ。 ぷふっっ!」




「……どこ揉んでんのよ? てか今バカにした? ねぇ? 貧乳バカにしたでしょ!?」




「あはは、ごめーん!」




 わりと元気な女性陣。


砂浜の者達と比べこちらは元気な者達が多い。


水浴びをしながら体を洗っているようだ。


 裸の女性たちがいっぱいで、なかなか刺激的な光景である。


とは言え、覗き趣味は無いのでバレて面倒にならないうちに上流へと移動したのだ。






「え!? きゃ、キャ――ふぐっ!?」




 しかし、何故か上流で一人で水浴びをしていた女性と遭遇する。


しかも裸だ。 大声を出される前に口に手をやり無理矢理黙らせる。


 手を外そうと掴むが、片方の手は押さえてあるのでほどけない。




「静かに、暴れるな。 大人しくしろ」




 まるで暴漢のような俺の言葉に、相手の女性は目を見開き暴れる。




「んん〜〜!!」




「だから暴れるなって! 何もしないから落ち着け!!」




 黙らせるなら手っ取り早い方法もあるのだが、さすがにそれはマズイ。


暴れる巨乳。 超巨乳だ。 しかも乳輪は小さい。 陥没だが。


暴れるたび、ブルンブルンと上下に動く。




「落ち着け。 誤解だ、たまたま通りかかっただけ。 見るつもりは無かったのだ」




 綺麗な長い黒髪とは裏腹に、下の毛は生えていない。 


水の滴る白い肌はシミ一つなく、体の線はその豊満な胸を支えるにはいささか細すぎるくらいだ。


 俺的にはもう少し肉があったほうが、好みだ。




「んんーー!」




「ぐへ!!」




 と、一瞬の油断を突かれ、金玉を膝で突かれた。


その衝撃に軽く地面と離れる。 吐き気にも似た激痛は俺を襲う。 


 失敗した、骨掛けを使っておくべきだった。


骨掛けとは金玉を腹部に収納させる技術だ!




「ぐぅ……。 ちょ! まて、し、死んじゃうからッッ!」


 


 膝を突き玉を押さえる俺に、巨乳が振りかぶる。


その手には石が握られている。




「ふぅッ……ふぅっ……」




「そうだ、落ち着け。 これは事故。 たんなる事故だ」




 今まさに俺の命は巨乳パイパンに握られている。


這いつくばりながら見上げ、助けてください、と懇願する。


 嗚呼、なんと情けない姿か。 


海外のアングラな歓楽街に行きはじめた頃を思い出すね!




「いつまで見てるんですか! あっち行ってくださいっ!」




「お、おう……」




 持っていた石を投げ捨て手で胸と秘部を隠すが、よけいにエロくなる。


やはり恥じらいは大切だ。 しかし、これ以上眼福していると叫ばれそうだ。


 俺は巨乳パイパンの指さした方に向かった。




「しかしどこかで見た巨乳だなぁ……?」




 顔を覚えるのは苦手だが、あの巨乳には見覚えがある。




「どういうつもりですか? 女性の水浴びの時間だと、伝えられているはずですが……!!」




 花柄の薄い水色の服を着た女性。 花柄が歪む程の巨乳はたしかイケメンの彼女だったか。 かなり温和そうな女性に見えたが、顔を真っ赤にして怒っている。




「もう! なんなんですか!? 英斗君にだってみせたことないのに、なんでこんな人に……」




 額に手をやりブツブツと呟く。 そうとうストレスが溜まっているのかね。


顔色も良くない。 白い肌というより青白い。




「体調悪そうだが、大丈夫か?」




「……大丈夫、です。 もとから少し貧血気味なので……」




 それは大丈夫といえるのか?


ろくな食事もとっていないしな。 この状況で動物性たんぱく質をしっかりと摂るのは難しかもしれない。 そう言えば、貧血に効くマッサージも習ったことがあったな。




「揉んでやろうか?」 そう口に出しかけるのをギリギリでとどめる。




「あまり無理するなよ、辛かったら言えよ?」




 貧血に効くマッサージをしてやろう。


オイルマッサージだ。




「……見た目と違って、優しいんですね」




 だからリサちゃんも、と若干ディスられつつ褒められた。




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