18話 四.五~五日目 テクニシャン

時は少し遡り、機長が皆を集めている頃。




 森に漏れる、甘い声。




「あっ、んんっ……気持ち、いぃ……」




 脱ぎ捨てられた肌着、外される赤い水着の紐。


ギャルの小麦色の肌をおっさんの指が蹂躙する。


 弧を描くように、ゆっくりと、リズミカルに。




「ん、あふっ、そこっ……!」




 おっさんの太い指はギャルの弱点を責め立てる。


さらにおっさんは指を滑らせ、下半身を責め始める。




「そこはっ、んんっ、だ、だめっ!」




 ギャルはやめさせようとうつ伏せに寝た状態から体を起こそうとするが、キュンと、快感が押し寄せる。 紐を外した水着が落ちかける。




「んん〜〜〜〜!!」




 ギシギシと木製の寝床は揺れ、今にもロープ代わりの蔦は切れそうだ。


ギャルは寝床の両端を鷲掴み、声を押し殺している。 頬を紅く染め、押し寄せる波を抑える。 勝手に浮いてきてしまう腰、その姿を想像し羞恥で湯気がでそうだ。




「よし、おっけー。 オイルマッサージ終わり。 気持ちよかったろ?」




「ハァッ……ハァッ……」


 


「ははっ、血行も良さそうだな。 日焼けにも効くし、虫よけにもなるんだよ。 ほんと凄いよなぁ、ココナッツオイル」




「……ん」




 ココナッツオイルが出来たと言ったおっさん。 ギャルは「美肌効果抜群のやつじゃん!?」と喜び、おっさんはオイルマッサージが出来ると言った。 ギャルは「やって! やって!」と、つい言ってしまったのだ。




 その結果がこれである。




(……ここで止めるとか、おっさんってドSなの!?)




 ギャルは知らない。 先程食べた卵がなんの卵なのか、スープに入った細かく切られた肉がなんだったのか。 体がポカポカしてなんだか調子がいい、それぐらいにしか思っていない。 滋養強壮に富んだ食事をとり、オイルマッサージで得た快感はギャルを悩ませる。 




(なんか変。 我慢できない……)




 ギャルはとろんとした瞳でおっさんを見つめる。


そんなギャルの気持ちも気づかずおっさんは……。




(さっき一瞬見えたな……! てか日焼け跡の下乳エロすぎだろぉ)




 ギャルに背を向け、悶々としていた。


彼等を呼びに来た者は気を利かせ、「お取込み中だった」と皆に伝えるのである。


 その後眠りについた彼等が少しもぞもぞしていたのは気のせいだろう。 






◇◆◇






 五日目の朝。


今朝はどんよりとした雲が空を覆っている。


 雨が降るのだろうか。




「……山田さん、起きてますか?」


 


 雨が降った時に水を確保する準備をしよう。


とは言っても、シートもないしバケツもない。


ヤシの葉の屋根の下にヤシのボウルを設置するくらいか。




「おっさん、呼んでるよ?」




「ああ」




 無視していたのに。 どうせろくでもないことだろう。




「僕たちは今日、水場に移動しようと思います。 山田さんはどうしますか?」




「俺か? どうするかな」




 イケメンの問いかけに悩む。


すでに救助を待つというより、救助が来るまで生き延びる、そう変化しているのだろう。 なんらかの理由で捜索が難航している。 長期での生存を考えるなら水場一択だ。




「リサはどうする?」




 ギャルを見てそう言うと、少し驚いた顔をした。




「……おっさんと一緒でいいよ」




 それだけ呟くと、向こうへ行ってしまった。


トイレか?




「……お二人は知り合いだったんですか?」




「いや?」




「それなのに……。 凄いですね……」




「?」




 僕たちなんてまだ……。 とイケメンは落ち込む。


風が少し強くなってきた。 憂いているイケメンのサラサラヘアーがなびく。




「俺も水場に行くが、まだ行けないな」




 作りかけのココナッツオイルがあるのだ。


今日中にはできるし、完成してからでもいいだろう。 またオイルマッサージしたいしね!




「……そうですか。 分かりました!」




 「では先に行ってます」と、イケメンは去っていった。


しかし、今日は天気が悪そうだが大丈夫だろうか? 


 いまいち頼りにならないおっさん分隊を思い出すと、少し心配だ。


湯を沸かしハーブティーを淹れる。 遠くの空を見つめるおっさんの口から溜息が一つ。


 


「ふぅ……。 砂糖が欲しいな……」


 


 おっさんは意外と甘党だ。

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