三階からも目薬

「おやおや? 目前の状況に合点もとい焦点がいかないんだけど? 目抜き通りに立ってるなんて、目指したところとは随分違う光景を目の当たりにしているよ? 皆目見当がつかないね?」

「私の目測では、作者が盲滅法に目のつく言葉を書き出すのに目がなくて、目先を変えるタイミング、あるいはやめどきを見失ったみたいね。目処が付くまでやるつもりみたいよ。変なところで目敏いんだから。だから、前回とキャラがぶれているのは目をつむってもらいましょう。目を通してもらえるだけでも御の字だし。ま、作者にとっては目の保養、読み手にとっては目を肥やす見逃せないチャンスだわね。目で目にもの見せてやる、目の穴かっぽじってよーく見ろ、ってことで」

「というわけで、目元涼やかな私ヒトミと、切れ長の目が目を引くアイちゃんの、耳目を集める双眸でお送りしまーす、ぱちん☆」

「え、なに?」

「せっかく目絡みだから、ウィンクくらいはサービスしとこうかなと。リップサービスならぬ」

「誰が得するのよ」

「それは心の目で目視してください」

「手抜きね」

「こら、この文脈では目抜きでしょ? 目を抜いたらめっ、だよ」

「部位を変えるだけでこんなに猟奇的になるのね」

「目の付け所が違いますから」

「節穴は黙ってなさい」

「目くじら立てないで~」

「チワワのような目で見てもダメよ」

「チワワじゃなくて人の目を見て話してよ。よそ見ダメ、絶対」

「そんなあなたは目が泳いでるけど。私の目に狂いはないから騙されないわよ」

「多目に見てよ」

「本当になんなのこれ、ゲシュタルト目潰しじゃない。目の遣りどころに困る、目を覆いたくなる、目を疑う光景よ。ほぼ毎行に目って出てくるんだけど。目が目詰まりしてる。目まぐるしいわ。妖怪百々目鬼パッセージってとこね」

「伏目あるいは薄目で見れば?」

「目の届く範囲全てに目が目一杯張り巡らされてるわ。目張りされてるわ。目立ってある意味目が離せない。作者の振る舞いが目に余るわ」

「着目するべきところに目星をつける必要がなくて楽だと思うけどな」

「看過できないわ」

「またまた~、お目こぼししてよ~。仏の瞬きも三度までって言うでしょ?」

「一瞬じゃない」

「あれ?」

「目をぱちくりしても誤魔化されないわよ」

「そんなに目が嫌なら、落ち着くために目を閉じて瞑想してみたら? 目の前に目があったら目移りしちゃうでしょ」

「目隠しとか、なにか目眩ましになるもの持ってない? ないか目を皿にして探して。ヒトミの手というか目を煩わせて悪いけど」

「目ぼしいものは見当たらないね。目医者さんに行けば?」

「この状況を目にしなくて済むなら金に糸目はつけないわ。金の切れ目が縁の切れ目とは言うけれど――本当に目の毒よこれ。目に焼き付いて離れない。その上裏目にたんこぶが出たわ。目が回る」

「いつもより多目に回しておりまーす……って、わわ、そんな血走った目で見ないでよ。そんなに辛いなら、目には目を、歯にも目を、だよ」

「どういう事?」

「無視歯――っつってね。ハンムラビ法眼だよ……うわあ、アイちゃんが目に見えてレイプ目だ!」

「こっちは目を光らせて光明を見出そうとしてるのに」

「眉唾とか言ってられない。目は口程に物を言うって本当なんだ」

「何針の縫い目をつけてほしいわけ?」

「すごい目力――。まるで目からビームが出そうなくらい。このままじゃ目の敵にされてしまう。目に入れても痛くないアイちゃんでいてもらわなければ」

「目付け役を呼んで御成敗式目で白目剥かせるわよ」

「法の目を細目でかいくぐるから大丈夫! っていうか、今のって友情で目頭が熱くなる展開じゃなかったの? ちらっ?」

「潮目が変わるところではなかったわ。流し目でどこに目配せしてるの?」

「本当に大切なものは、目に見えないんだよ」

「はっ、めぼで茶を沸かせるわ」

「そんな事言っちゃいけないよ。目くそ鼻くそを笑うだよ」

「誰がどっちなの?」

「目と鼻の先って言うんだから、どっちでも一緒だよ。鼻くそアイちゃん目くそのヒトミとして、色目使って折り目正しく活動していこうよ」

「見た目はともかく、名目がクソみたいな目標ね」

「番組の頭目とゴルフに行って芝の目読んだりしたいでしょ?」

「目が曇り過ぎよ」

「ともかく、眼精疲労にはこれだよ。じゃーん、新しい目! 目にもとまらぬ速さで投げる!」

「残念だけど、私アンパンマンじゃないのよ」

「ジャ目おじさんがせっかく作ってくれたのに……?」

「邪眼おじさんみたいじゃない、やめなさい」

「目に貴賎なしだよ。目のメリトクラシーは時代遅れだよ」

「泪が出るほど何言ってるか分からないわ」

「目探偵コナンは、麻酔入り目薬をドライアイのおっちゃんに打つんだよ」

「衆目にバレバレじゃないの」

「そこは上手く意味深なアイコンタクトを使って目を欺くから大丈夫」

「目も当てられない事態にはならずに済むのね」

「目た盛るフォーゼ」

「何の事?」

「水増しだよ」

「やっぱり」

「見た目盛るフォーゼはプリクラとかPhotoshopのことだよ」

「あなたが既に言葉の目盛りを随分と盛って解釈しているものね」

「『瞳をとじて』って、一見おかしいよね」

「瞳に目って意味があるから心配ないわ」

「目を見張るって、じゃあ何がその目自身を見張るんだって思わない?」

「ユウェナリスじゃないのよ」

「全身を耳にして耳を傾けられるなら、全身を目にして目を凝らせると思わない?」

「という動機でここまで節目なしにやってきて、振り返ってみると我が事ながら瞠目するわね。こんな目覚ましい文章を目にするなんて目から鱗だわ。居候、三杯目にはそっと出しと言うけれど、よく臆面もなく目を繰り返したものね」

「種目品目問わず目の目録ができちゃったね」

「目次作るのも面倒だわよ」

「表紙は木目調の目玉のおやじにしてもらおうね」

「これぞフィクションの面目躍如」

「第三の目、開眼するかな?」

「さすがに三編目はないと思いたいわ。もう懲り懲り」

「とんだ目に遭ったね。最後に記念写真だけ撮っとこうか。目線こっちちょうだい。ぱしゃ。あ、赤目になっちゃった……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

二階から目薬 めぞうなぎ @mezounagi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ