ダンジョン歴10日目Ⅱ

 腹痛が治まったので、準備をすることにした。どうやら空きっ腹に堪えただけで、あの芋の葉は無害だったらしい。そう思いたい。

 準備というのは、このキャンプ地から出る準備のことだ。ついでに言えば、別の食べ物を探すための準備だ。

 そう……肉だ。やっぱり、栄養をつけるには動物の肉が要る。

 意外に思うかもしれないが、ダンジョン生物の肉というやつは、得体の知れない植物に比べればまだ毒のある可能性が薄い。内臓を避けて、火さえきちんと通せば腹の中で悪さをすることはあまりない。味は兎も角だ。

 なら、どうして最初から動物を獲って食べなかったのか?忘れて貰っては困る。今の俺は上半身裸で、武器もろくにないのだ。おまけにキャンプの周りには『獣除け』の結界が張り巡らしてある。下手に狩りのために動き回って、成果なしのまま体力を使い果たしては洒落にもならない。簡単に手に入る食べ物が、まずは必要だった。

 とにかく、狩りをするにも外に出るにも武器が要る。俺は手始めに、枝をへし折って石で磨いた槍を作った。『尖った木の棒』と言った方が正確かもしれないが。槍と言えば槍だ。

 本当は『竹』があるとよかったんだが、無いものは仕方ない。あれは、切り落とすだけで鋭い槍ができる。まぁ、そもそも切り落とす刃物が無いから仕方ないんだが。


 ああ、それと、松明も作った。明かりなら魔力光があるじゃないかって?残念ながら用途が違う。大事なのは、松明の煙だ。ダンジョンは元々地下にあるせいか、穴を掘る習性のある生き物が住んでいることが多い。そういう生き物を燻りだすのに使うんだ。勿論、一歩間違えれば俺の方が燻りだされる可能性もあるから、その辺は注意が要る。

 あとは防具……が欲しいところだが、後回しだ。動物の皮が要る。作るなら、狩りの後だ。


 今夜は、槍を抱いて寝ることにする。いくら粗末でも、手元に使い物になる武器があるだけでこんなに落ち着くなんて思ってもみなかった。こんなことなら、もっと早く作れば良かった。


(深夜追記)

 俺は馬鹿だ!こんな単純な見落としをするなんて。

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