ダンジョン歴9日目Ⅱ
生きている。
感想はこれだけだ。二度とやりたくない。だが、これで飢えに苦しむことだけはなさそうだ。
深層ダンジョンの植物は、食べると何が起こるかわからない。おまけに、ダンジョンごとに植生が全然違うせいで、どれを食べれば安全なのかすら、ろくに分からない始末だ。だが、『安全に食べられるものを判別する方法』はある。
俺がやった手順を、今から書いていく。まず、なるべく地上の植物に似た見た目の物を探す。今回は、芋っぽい根っこと木苺っぽい実のなる草が見つかった。
次にそいつを、分解する。葉、茎、根、芽花。だいたいに分けたら、小さく千切って、なるべく敏感な部分の皮膚にあてて暫く待つ。何も起きなければ良しだ。ちなみに今回は不幸にも、芋的な何かの根と、木苺っぽい何かの葉でかぶれが出た。おかげで今、内股が凄まじく痒い。
次に、大丈夫だったものをなけなしの水でよく煮る。煮込んだら、少量を口に含んでよく噛む。この段階で妙な味や感触がしたら、すぐに吐き出して口をすすぐ。草の根と茎を噛んでいた時にしびれを感じたので、吐き出した。
……最後。出来上がったものを食べてみる前に、『獣除け』が緩んでいた場所の近くに撒いてみた。ダンジョン生物が食べて平気だったからといって、人間が大丈夫ということにもなるまいが。半分は気分の問題だ。しばらくの間置いておくと、無くなっている切れ端があった。
ここまですれば、まぁ食べても即死する、なんてことは無いだろう。というか、なかった。最悪の事態を考えて、治癒魔法をかけながら飲み込んだが、特に魔法が効いたような手応えは無かった。
結局、調理に使う火を起こすのに手間取ったのもあって、ほとんど丸一日がかりの作業だった。ここまでの凄まじい苦労の果てに得られた、究極の食べ物を紹介しよう。
芋の葉っぱ。
以上だ。
ちなみに、味はクソまずい。酸っぱい干し草でも食ってるような気分だ。だがこれで、飢え死にする心配だけはない。その前に俺は、俺は飯の不味さでどうにかなるだろうからだ。
……明日は、もう少しマシな食べ物を探そう。できれば、肉が食いたい。そのための武器が欲しい。
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