第二話 彼らの音楽

ウナが中へ入るとほかの人がいた。皆、飲み物を飲んでいた。ここはライブハウスのようだった。


とここで気づいた。


(ここ、わたしが初めてライブみたいな感じで歌った場所だ)


「いらっしゃいませ。お一人ですか?」


と受付の人に言われた。彼女はピンク色の髪をしていてウナより少し年上っぽかった。


「はい」


「では、あちらの席でお待ちください」


と言われる通りにウナは動いた。


これは店言っていいと思うが店内はとても広く約五十人くらい収容できそうであった。そして、奥にはとても目立つようにバンドステージがあった。


すると、一人の女性がステージに立った。


「初めましてここのオーナーをやってます、初音ミクです。今日は我々がライブをしたいと思います。十分後から始めますのでお楽しみに」


そして、ステージから下がっていった。


(動画で聞いてた声より怖い……?)


ウナはそんな印象を受けた。


動画ではとても優しい声で歌っていたのだが今の声はちょっと予想外だった。


すると、ここに来ていた人たちは急に帰ってしまった。皆は口々揃えて言っていた。


「あいつらの曲、ちょっとなぁ……」


「なんかTHE☆インディーズだよな」


ウナは顔をしかめた。


(いい曲だと思うんだけどなぁ……)


そして、さっきの女性がステージに上がった。


「えー。我々が初音ミクとダイナミック自演ズです……」


あまりやる気のなさそうな声で言った。すると、ウナに気づいたようだ。


「お?珍しくお客さんが残ってくれたなぁ……。じゃあ、はかまー、よろしくー」


と裏方の名前かわからないが誰かに呼びかけていた。そして、女性は歌う準備をしていた。


ウナは息を呑みながらその時まで待った。


そして、音楽がかかり始めた。それは聞き覚えのあるイントロだった。



『本日は初音ミクとダイナミック自演ズのライブにご来場いただき誠にあぁっす。

最後までよかったら聴いて言ってください』



(その『あぁっす』って何……?)


とそんな疑問を浮かべたが歌い始めた。


その時、ウナが思ったのは昨日、始めて聴いた時のように自分のことを言ってくれてるような感じで心が温まる感覚だった。


そして、曲が終わるとウナは拍手をしていた。


「ん?」


と女性はウナを見つめた。


「え?」


すると、だんだんとウナへと近づいて来た。


顔をジロジロと見回して言った。


「君、音街ウナちゃんだよね?」


「え?あ、はい。音街です……」


「おーい!はかまー!欲しいなって言ってた子が来てくれたよー!」


すると、奥からゾロゾロと出てきた。


「あ!本当だ!」


と一人の男性が一気に迫ってきた。そして、手を握るとブンブンと振り回した。


「初めまして!僕はカルロス袴田!よろしく!」


「よ、よろしくお願いします……」


こんなテンションで寄られると妙に気まずかった。

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