初音ミクとダイナミック自演ズ
ころ
第一話 小さなきっかけ
彼女は一人歩いていた。ただふつうの路地を。電灯の灯りがスポットライトとなり彼女を小さく映していた。
「はぁ……。今日もダメだった……」
彼女は肩を落とし落胆していた。
彼女の名は音街ウナ。いつか音楽のメジャーで活躍できることを夢見ている少女だ。
最近、ウナは近場の路上でライブをしてどうにか自分の歌を届けようと頑張っていた。だが、全くうまくいかず成果も何も得られなかった。
「ただいまー」
誰もいない家にそう言った。
夜ご飯の用意を済ませてご飯を一人寂しく食べる。そんなものも慣れてしまった。
と急に電話がかかって来た。友人の東北きりたんである。
『ウナちゃんどー?うまくいってるー?』
「全然。もうやめようかなぁ」
『そこまで落ち込んでるの⁉︎大丈夫?』
「大丈夫大丈夫。中々自分の曲を聴いてもらえないからね……」
そこから先は何も言わなかった。
『やっぱり落ち込んでるじゃん……。嘘は言わなくてもいいんだからね』
「うん。ありがとう」
慰められてしまった。
『じゃあさ!最近、ネットでいい曲見つけたんだけど聴いてくれない?」
「えー。ネットー?」
ウナはネットとかで曲を聴くことはなくただ調べ物をするときにしか使わなかった。
『後でURL送るからねー!じゃあ!』
「え?ちょっと、きりたん⁉︎」
一方的に切られてしまった。本当にすぐにURLが送られてきた。その曲のタイトルは『OhSOS!!!』誰に助けを求めてるんだろう。
と一抹の不安を感じたが友人のきりたんに送られてきたので開けることにした。
すでにたくさんのユーザーが見ていてコメントも流れていた。
残酷な世を生きる君へ
夢見て汗かいて
打ちひしがれてる君へ
今のわたしのことだ。
1番のAメロからすぐに自分に当てはめることができた。
そして、ラスサビ。
やれることなら
まだ転がってんよ
一緒に歌でもどうでしょ?
この時、ウナは涙が出そうだった。歌詞が今の自分に合っていたからだ。
そして、動画だったので説明欄をのぞいてみる。
『初音ミクとダイナミック自演ズ』
(すごい名前だなぁ……。自演は自分で演奏するってところから来てるのかな)
その名前の下にURLが貼ってあったので入ってみることにした。そこは彼らの拠点となっているサイトだと思われた。
そして、一枚の写真があった。
(この場所見たことある……。どこで見たんだっけ……?)
初音ミクとダイナミック自演ズが写真に写っている背景の様子もどこかで見たことがあった。
(明日、何もないから行こうかな)
そう思い今日は眠りについた。
そして、次の日。
ウナはその『初音ミクとダイナミック自演ズ』がいると思われる建物の前へとたどり着いた。
緊張しながら中へと入っていった。
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