常夏の花

@takabayashi

第1話

「みんなも知っているだろうが、今日転校生が来た。みんな仲良くするように。」


先生がざわざわ騒がしいクラスにそう言う。


「なぁなぁ待宵。お前はどっちだと思う?」


俺、待宵 蒼太話し掛けたのは待宵の小学校からの親友、明石 厚。黄色に近い茶髪でトゲトゲとしたスパイキーヘアーの少年だ。


「は?」


「転校生だよ。女の子が来るかどうかって話。」


俺は女の子だと思うんだけどな。と剽軽な声色の明石がヒソヒソ声と話す。


「はぁー?どっちでもいいだろー。、つぅか、お前の場合は来ると思う、じゃなくて女の子に来て欲しいな、だろ。」


ぶっきらぼうに答えると、ちぇーつまんねーのーと明石がぶーぶーと言う顔をしている。気持ち悪い。


俺は、面倒くさいので明石を無視することにして先生の話に耳を傾ける。


「えー、今回来る転校生は、小学生の頃までここら辺に住んでたらしいが、体の都合により遠くの田舎の方に引っ越していたようだが、最近調子が戻ってきたからこっちに帰ってきたそうだ。」


「まだ、苦しいこともあるようだから、みんな、もし何かあったら、保健室に連れていってやってくれ。」


体の、都合?引っ越さなければならないようなこととは何なのだろうか。何かの病気なのだろうが、田舎の方に引っ越すなんて精神病か何かなのかもしれない。そんなことを考えていると先生がドアの方に向かって、おーい、入ってこい。と言った。



ガラガラ....


「こんにちは。今日からこのクラスでお世話になります。撫子 鴇羽です。よろしくおねがいします。」

転校生はにこやかな笑顔で自己紹介をする。

どうやら女の子だったようだ。良かったな明石。


ふわふわとした髪質で背中丈の長さ、セミロングくらいの毛先が少し茶色っぽい黒い髪の毛に、白雪姫を連想させる真っ白の肌に紅い唇。そして宝石のように綺麗な瑠璃色の瞳をしている。

一言で言うと、とてもべっぴんさんである


「席はー、あぁ、あそこが空いているな。」


みんなの視線(男子は少し睨みがはいっている)がこっちを向く。何故だ。と思って周りを見渡すと、俺の左隣の窓際の席が空いていた。


どうしていいか分からず、明石の方に目をやると、にやにやとしながら口パクで良かったなと言ってくる。非常に鬱陶しい。


「待宵、撫子が困ってる事があったら助けてやってくれ」


まじかよ。


隣を見ると、撫子鴇羽がニッコリと笑ってペコリとした。うぅん。周りの男子の目が気になる。


そんなこんなでホームルームが終わると撫子鴇羽は話し掛けてきた。


「よろしくお願いします。えっと....」


「よろしく。」


俺は、ついつい面倒臭そうに(実際にちょっと面倒臭い)に答えてしまう。


「あっ、その、えっと....」

あ、少し怯えてるな。と少し申し訳なく思った。


「?」


「お名前は....」


おずおずと上目遣いで撫子が尋ねてくる。


「待宵 蒼太」


「ありがとうございます。待宵、さん」

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